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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)264号 判決

徳島県板野郡北島町太郎八須字西の川10番地の1

原告

四国化工機株式会社

代表者代表取締役

植田滋

訴訟代理人弁護士

久田原昭夫

久世勝之

弁理士 岸本瑛之助

廣田雅紀

スウェーデン国 エス-221 86 ルンド

ルーベン

ラウジングス ゲータ

被告

エービー テトラパック

代表者

ラース オッケ フォースバーグ

訴訟代理人弁理士

田中義敏

清水正三

三好秀和

岩崎幸邦

中村友之

伊藤正和

鹿又弘子

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成6年審判第5323号事件について、平成8年9月19日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

被告は、名称を「包装材料をヒートシールする方法及び装置」とする特許第1795565号発明(以下「本件発明」という。)の特許権者である。

上記特許の出願から設定登録までの経緯は次のとおりである。

昭和57年10月8日 出願(優先権主張・1981年10月8日、スウェーデン国)

平成2年9月20日 出願公告

平成4年1月23日 手続補正(以下「第1次補正」という。)

同 年3月27日 拒絶査定

同 年8月31日 拒絶査定に対する不服の審判請求

同 年9月30日 手続補正(以下「第2次補正」という。)

平成5年10月28日 設定登録

原告は、平成6年3月22日に被告を被請求人として、上記特許につき無効審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成6年審判第5323号事件として審理したところ、被告は、平成7年12月31日付訂正請求書によって訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)をした。特許庁は、平成8年9月19日、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年10月9日、原告に送達された。

2  本件発明の特許請求の範囲

(1)  第1次補正に係る明細書記載の特許請求の範囲

〈1〉 積層材料を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、

前記方法は、

前記積層材料を中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)に沿って重ね合わせ、前記熱可塑性材料の外層(3)の表面が前記両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させるようにする段階と、

前記熱可塑性材料の外層(3)を前記両シール帯域(13、14)以内で該熱可塑性材料の融点まで加熱して当該熱可塑性材料の外層(3)を溶融材料とし、同時に前記熱可塑性材料の外層(3)を互いに前記中央シール帯域(13)において圧して前記溶融材料を前記両シール帯域(13、14)以内の前記積層材料の一表面から流出させて、これが前記熱可塑性材料の外層(3)の溶融していない部分によりせき止められ、これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記積層材料(4)の表面同志を密着させる段階と、

前記熱可塑性材料の外層(3)を前記溶融材料を冷却硬化させ、前記両シール帯域(13、14)以内で前記積層材料間に完ペキなシール部分を形成させる段階と、を有する積層材料を互いにヒートシールする方法。

〈2〉 特許請求の範囲第1項に記載の方法において、前記積層材料は、前記シール帯域の両側で冷却されるようになっている方法。

〈3〉 積層材料をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、前記熱可塑性材料の外層(3)を中央シール帯域(13)およびその両側シール帯域に沿って互いに重ね合わせて該両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させ、さらに該両シール帯域(13、14)に沿って前記熱可塑性材料の外層(3)の一つに押し付けられるようになった作用面(8)を有する細長いシールジョー(5)を有するようになっている積層材料のヒートシール装置において、

前記シールジョー(5)は前記両シール帯域(13、14)に沿って対向ジョー(12)に対して前記熱可塑性材料の外層

(3)を押し付けるための平らな表面を有する本体(6)と、該本体(6)の平らな表面に形成された溝と、

該溝内に嵌合され且つ前記本体(6)の平らな表面と一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料の外層(3)を加熱するための加熱棒(7)とを含み、

前記作用面(8)には、平らな平面を有する突条(9)が設けられ、該突条(9)の平らな平面が前記中央シール帯域(13)以内で前記熱可塑性材料の外層(3)を互いに押し付けるようになっており、これにより、溶融材料が前記積層材料の表面より流出されるが、これが前記熱可塑性材料の外層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっていることを特徴とする積層材料のヒートシール装置。

(2)  本件訂正請求に係る請求書に添付された訂正明細書(以下単に「訂正明細書」という。)記載の特許請求の範囲

〈1〉 積層材料同士(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、前記方法は、

積層材料同士(10、11)を、中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)に沿って重ね合わせ、前記熱可塑性材料層(3)の表面が前記両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させるようにする段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を含む積層材料同士(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)以内で圧して該熱可塑性材料(3)の融点まで加熱して、当該熱可塑性材料層(3)を溶融材料とし、

同時に前記熱可塑性材料層(3)を前記中央シール帯域(13)において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層(3)の溶融材料を、前記中央シール帯域(13)以内の前記導電性材料層(4)の表面から流出させ、

前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、

これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記導電性材料(4)の表面同士を密着させる段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を冷却して前記溶融材料を冷却、堆積硬化させ、前記両シール帯域(13、14)以内で前記積層材料間に完ぺきなシール部分を形成させる段階と、を有し、

前記導電性材料層(4)に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融し、さらに該積層材料同士(10、11)は、前記中央シール帯域(13)を、断面がほぼ矩形の突起(9)の先端面で圧するようになっていることを特徴とする包装用積層材料を互いにヒートシールする方法。

〈2〉 特許請求の範囲の第1項に記載の方法において、前記積層材料は、前記シール帯域(13、14)の両側で冷却されるようになっていることを特徴とする方法。

〈3〉 積層材料(10、11)をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、

前記熱可塑性材料層(3)を、中央シール帯域(13)及びその両側シール帯域(14)に沿って互いに重ね合わせるとともに、該両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させ、

前記積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し、溶融した熱可塑性材料を冷却固化させるようにして、前記積層材料同士(10、11)をヒートシールするための装置において、

前記シールジョー(5)は、

前記熱可塑性材料層(3)を含む前記積層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)と、

該本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝と、

該溝内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱棒(7)とを含み、

前記細長いシールジョーの作用面(8)は、前記両側シール帯域(14)に沿って、前記熱可塑性材料層(3)の一つに押し付けられるようになっており、かつ、

前記作用面(8)には、該作用面から突出する断面がほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)が設けられ、

前記加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯域(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっていることを特徴とする積層材料のヒートシール装置。

3  審決の理由の要点

審決は、別添審決書写し記載のとおり、第2次補正は実質上特許請求の範囲を拡張するものであって、平成5年法律第26号による改正前の特許法17条の3が準用する同法126条2項の規定に違反していると認められるので、平成5年法律第26号による改正前の同法42条の規定により、第2次補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなすとし、本件訂正請求につき、訂正請求される前の明細書は第1次補正がなされた明細書であるとしたうえで、訂正事項はいずれも特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするもので平成6年法律第116号による改正前の特許法134条2項の規定に適合し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから同法134条5項で準用する同法126条2項の規定に適合し、訂正後の特許請求の範囲第1項及び第3項記載の各発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであって同法134条5項で準用する同法126条3項の規定に適合するものであるので、訂正を認めるとし、本件発明の要旨を訂正明細書記載の特許請求の範囲記載のものと認定したうえで、特許請求の範囲第1項記載の発明及び同第3項記載の発明は、原告が堤出する各証拠方法に記載された発明であるとすることはできず、また、各証拠方法に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできないから、本件発明を無効とすることはできないとした。

第3  原告主張の審決取消事由の要点

審決の理由中、第2次補正が実質上特許請求の範囲を拡張するものであって、平成5年法律第26号による改正前の特許法17条の3が準用する同法126条2項の規定に違反していること、甲第5~第8号証、第10~第13号証の各記載事項の認定は認め、その余は争う。

審決は、本件訂正請求の可否を判断するに当って、第1次補正に係る明細書を訂正の基準としたうえ、訂正事項が特許請求の範囲の減縮に当たらないことを看過して訂正を認めた点に誤りがあるとともに、本件発明の要旨の認定を誤り、さらに、訂正明細書記載の発明が、原告提出の各証拠方法に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないと誤って認定したものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(第1次補正に係る明細書を基準として本件訂正請求を認めた誤り)

審決は、第2次補正が実質上特許請求の範囲を拡張するものであって、平成5年法律第26号による改正前の特許法17条の3が準用する同法126条2項の規定に違反していると認められるので、平成5年法律第26号による改正前の同法42条の規定により、第2次補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなすとしながら、「本件発明の訂正の可否を判断するに際し、平成7年12月31日付けの訂正請求書(注、本件訂正請求書)により訂正請求される前の明細書は、出願公告後に平成4年1月23日付けで手続補正(注、第1次補正)がなされた明細書である。」(審決書15頁9~13行)として、第1次補正に係る明細書を基準として本件訂正請求を認めたが、これは、誤りである。

すなわち、本件出願に対しては、第1次補正に係る明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明が仏国特許出願公開第2027012号明細書(甲第5号証)記載の発明と同一であるとして、平成4年3月27日に拒絶査定がなされているのであり、これに対する不服審判において被告が第2次補正をした結果、本件特許がなされたものである。しかし、審決が認定したとおり、第2次補正は違法であって、本来却下されるべきものであったから、審決が、第2次補正が違法であると判断したことにより、本件出願に対し拒絶査定がなされた法律状態に戻らなければならない。しかるところ、被告は、上記不服審判において、第2次補正に係る明細書記載の特許請求の範囲に基づいて特許がなされるべき旨を主張したが、第1次補正に係る明細書記載の特許請求の範囲に基づいては、何ら不服の理由を主張していないから、第2次補正が違法であると判断されれば、拒絶査定に対する不服の理由が存在しないことになる。手続補正は、審判請求の日から30日以内でなければすることができないから(平成5年法律第26号による改正前の特許法17条の3第1項)、仮に、本件出願が係属中に第2次補正が却下されたとすれば、被告は、更に新たな手続補正をするということもできなかったのである。そうすると、第2次補正が違法である以上、本件出願は実質的に拒絶査定が確定したに等しい。第2次補正が違法である場合に、平成5年法律第26号による改正前の特許法42条の規定により、第2次補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなされるが、この場合の第1次補正に係る明細書記載の特許請求の範囲については、既に拒絶査定がされているのであるから、審決が、第2次補正を違法とした判断は、とりもなおさず、本件出願が元来維持できなかったことを示すものである。それにもかかわらず、審決は、第1次補正に係る明細書を基準として本件訂正請求を認めたのであるから、審決には理由齟齬があることになる。

元来、訂正審判請求は特許が無効とされた後にはできないのであるから、訂正審判請求と趣旨を同じくする訂正請求においても、既に拒絶査定がされたと同じ法律状態となった以上、訂正は許されないと解すべきである。

また、無効審判中に訂正請求が許されているのは、訂正審判請求と同じく、当該特許の出願過程で拒絶理由となる事由が判明していれば、手続補正をすることにより特許を受けられたのに、特許を受けた後になって同一事由が判明した場合に、それが無効事由となって、発明の全部について特許無効となるのは特許権者に酷であるとして、特許請求の範囲を減縮すること等により当該無効事由を回避してもなお量的に特許性が残存するのであれば、その限度で特許権者を救済しようとするものである。ところが、本件訂正請求の当否を判断するに当たり、その基準とされた第1次補正に係る明細書は、拒絶査定がされ、手続補正をすることもできないという法律状態にあって、特許を維持できないいわば質的な瑕疵のあるものである。このような状態の明細書を基準として訂正を認めることは、訂正請求の制度を認めた法の趣旨を逸脱するものである。

さらに、もし本件特許の出願過程で第2次補正が違法とされていれば、本件特許が成立することは不可能であったから、出願過程において第2次補正の違法が看過された本件特許につき訂正が認められ、特許が維持されるものとしたら、出願過程で違法が明らかにされた場合との均衡を著しく失することになる。

したがって、第1次補正に係る明細書が平成6年法律第116号による改正前の特許法134条2項にいう明細書に当たることはないのであり、審決が、これを基準として本件訂正請求を認めたことは誤りである。

2  取消事由2(本件訂正請求の訂正事項が特許請求の範囲の減縮に当たらないことを看過した誤り)

審決は、本件訂正請求に係る訂正事項のうち、第1次補正に係る明細書の特許請求の範囲を訂正明細書記載の特許請求の範囲に訂正することが、「訂正前には特許請求の範囲において加熱溶融する手段が限定されていなかったのに対し、訂正により導電性材料層に高周波を印加する主旨の限定を加えることをその骨子とするものであるので、これは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。」(審決書25頁14行~26頁1行)と判断したが、誤りである。

すなわち、審決は、特許請求の範囲第1項の「積層材料を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の(3)を有するようになっているものにおいて、」との記載を、「積層材料同士(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」と訂正すること、及び、同第3項の「積層材料をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、」との記載を、「積層材料(10、11)をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の(3)を有し、」と訂正することが、不明瞭な記載となっただけで、減縮に当たらないとの原告の主張に対し、「今回の訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと認められるし、しかも、『熱可塑性材料の外層(3)』と『熱可塑性材料層(3)』とは、共に同一の番号『(3)』が付されていることからみて、両者は同一のものをやや異なる表現で単に言い代えたものにすぎないことは明らかというべきあるので、請求人が指摘する点が不明りょうであるとも認められない。」(審決書27頁19行~28頁7行)として、これを排斥した。

しかし、訂正明細書記載の特許請求の範囲において、「各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、」ということは、積層材料が3つの層を有するということであり、「かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有」し(する)ということは、前記3つの層からなる積層材料とは別に、第4番目の層である熱可塑性材料の外層(3)が存在し、その融点は、積層材料の融点より低いということである。ところが、「熱可塑性材料層(3)」と「熱可塑性材料の外層(3)」とは同一のものであるというのであるから、必然的にその融点は同一となり、訂正明細書記載の特許請求の範囲には矛盾があるといわざるを得ない。したがって、本件訂正請求は、特許請求の範囲の記載を不明瞭とするもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとはいえず、審決の判断は誤りである。

被告は、「かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有」し(する)との記載が、熱可塑性材料の外層(3)が、積層材料(10)と積層材料(11)との一表面を覆っていない積層材料、すなわち比較的剛性の中心支持層である外層(3)以外の積層材料の融点よりも低い融点を有することと理解するのが正当であると主張するが、訂正明細書記載の特許請求の範囲に「積層材料(10)と積層材料(11)との一表面を覆っていない積層材料」、「比較的剛性の中心支持層である外層(3)以外の積層材料」というような記載はない。

3  取消事由3(本件発明の要旨の認定の誤り)

審決は、本件発明の要旨を、訂正明細書記載の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認定した(審決書72頁18行~73頁1行)。

しかし、上記取消事由1、2及び後記取消事由4のとおり、本件訂正請求はその要件を欠くものであって、認められないから、本件発明の要旨は、第1次補正に係る明細書記載の特許請求の範囲に記載されたものとなる。

したがって、審決の本件発明の要旨の認定は誤りである。

4  取消事由4(進歩性の判断の誤り)

審決は、訂正明細書記載の特許請求の範囲1項及び3項に記載された各発明(以下、順次「本件第1発明」、「本件第2発明」という。)が、いずれも優先権主張日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である仏国特許出願公開第2027012号明細書(甲第5号証、以下「甲5引用例」といい、そこに記載された発明を「甲5発明」という。)、特公昭55-3215号公報(甲第6号証、以下「甲6引用例」といい、そこに記載された発明を「甲6発明」という。)、特開昭51-489号公報(甲第7号証、以下「甲7引用例」という。)、実願昭51-60477号(実開昭52-152067号)のマイクロフィルム(甲第8号証、以下「甲8引用例」という。)、米国特許第3673041号明細書(甲第10号証、以下「甲10引用例」という。)、仏国特許出願公開第2230484号(甲第11号証、以下「甲11引用例」という。)、スウェーデン国特許出願公告第318993号公報(甲第12号証、以下「甲12引用例」という。)、特開昭54-72185号公報(甲第13号証、以下「甲13引用例」という。)に記載された発明であるとすることができず、またこれらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないとし(審決書71頁19行~72頁3行)、その結果、訂正明細書記載の本件第1、第2発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものと判断して(同72頁3~5行)、本件訂正請求を認め、さらに、本件発明の要旨を訂正明細書記載の特許請求の範囲に記載されたものとの認定を経て、特許法29条2項、平成6年法律第116号による改正前の同法123条1項1号により本件特許を無効とすることはできないと判断した(同90頁9行~91頁3行)。

しかし、本件第1、第2発明は、次のとおり、上記各引用例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、審決の上記各判断は誤りである。

(1)  本件第1、第2発明と甲5発明との対比

ア 審決は、本件第1、第2発明と甲5発明とを対比して、「甲第5号証に記載されたものは、前述の本件第1発明における必須の構成要件のうち、・・・『中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)』、『シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させる』・・・を欠き、また、前述の本件第2発明における必須の構成要件のうち、・・・『熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっている』を欠くものである。」(審決書58頁13行~60頁16行)と認定し、さらに、「甲第5号証に記載されたものは、ジョー(9)と(11)により押圧された結果、溶けた熱可塑性材料が毛細管現象で縮み、また、層(5)と(7)及び熱融着部(16)によって画定された2つの空洞(17)を形成する、のに対し、本件第1及び第2発明におけるものは、突起で押圧することにより流出し、また、シール帯域の中の高圧の領域には不純物の無い非常に薄い熱可塑性材料の層が残るものであるので、両者は、熱可塑性材料の流出形式、及び、シール帯域の中の高圧の領域に熱可塑性の層が残るか否か、の点でシールの内容を異にするものである。」(同58頁1~12行)と認定した。

しかしながら、甲5発明においては、熱融着部(14)、(15)の間の領域が本件第1発明の中央シール帯域(13)に、熱融着部(14)、(15)が本件第1発明の両側シール帯域(14)に相当するものである。

また、甲5引用例の図面第1、第2図に示されているとおり、甲5発明においては、熱可塑性材料はシール帯域内で溶融し、溶融した熱可塑性材料が熱可塑性材料層の溶融していない部分によってせき止められるようになっている。

さらに、甲5引用例に「ジョー(9)と(11)との間に含まれる中央領域において、層(6)と(8)の融着可能材料は溶け、この領域は、圧縮を続けている間徐々に広がる。この圧縮は、層(6)と(8)の溶けた材料が毛細管現象で縮み、中央層(第2図)を去って横方向に分かれ、・・・層(6)と(8)の間にたまたま存在する汚れ粒子(16)は、その縮み移動の際に、溶けた材料の中に完全に埋没してしまう。」(甲第5号証訳文3頁6~11行)と記載されているが、これは、押圧された結果、溶融熱可塑性材料が中央層(中央シール帯域)から流出することを意味するだけでなく、その流出の意図が、溶融熱可塑性材料がシール帯域の高圧領域(中央シール帯域)から左右の隣接部分(両側シール帯域)へ押しやられる問に、可能な限りの不純物を混入連行するという本件第1、第2発明の流出の意図と同様であることを示している。甲5発明と本件第1、第2発明とでは、溶融熱可塑性材料の移動についての表現こそ異なれ、同じ結果を得ようとして突起(突条)が存在していることに変わりはない。

また、甲5引用例に「第2図は、シーリング作業中の同一図である。」(甲第5号証2頁37~38行)、「第2図に示し、かつ層(5)と(7)及び熱融着部(16)によって画定された2つの空洞(17)は、それぞれ層(5)と(6)および(8)と(7)にきわめて薄い皮膜として以前に存在しかつこれらの層を相互に接着せしめるために使用された、変形された成層材によってうめられたことが分かるだろう。第2図において、図示されているように、層(5)と(7)が、分離線に沿って、たとえ接触していても、これらの層の間には真の接触は存在しないのである。割に高い圧力のもとでも、ある量の成層材は分離線上に残存している。その結果、融着ジョーが相互に離間すると、蓋(2)は容器本体(1)に熱融着され、菌に対し気密となる。」(同号証訳文3頁11~20行)と記載されているとおり、甲5発明において、空洞(17)が図示された第2図はシーリング途上の状態を説明するものであって、空洞(17)がそのまま残るわけではなく、成層材によって埋められるのであり、分離線上(V型の突起の稜線部分で押圧される箇所)にも成層材が残存するのである。そして、訂正明細書には「帯域13内には表面の凹凸等のために絞り出され得ない微量のプラスチック材料のみが残り、」(甲第2号証の1添付明細書7頁17~18行)と記載されているが、甲5発明においても、加圧前の高圧の領域に存在するものは熱可塑性材料であるから、技術常識上、加圧後も熱可塑性材料が成層材とともに分離線上に微量残存しかつ空洞を埋めるものと考えざるを得ない。仮に、空洞(17)を埋めた成層材の間に隙間が生じようとしても、その隙間には溶融された熱可塑性樹脂が流入せざるを得ない。

したがって、本件第1、第2発明と甲5発明とは、熱可塑性材料の流出形式及びシール帯域の中の高圧の領域に熱可塑性の層が残るか否かの各点で実質的に異なるところはなく、シールの内容を異にするとの審決の認定は誤りである。

イ そうすると、甲5発明の「フランジ(層状形成材料)(3)(4)」、「熱融着可能な接触層(ポリプロピレン)(6)(8)」、「ある程度の機械強さをもつ外層(アルミニウム箔)(5)(7)」、「中央領域」、「熱融着部(14)(15)」、「突起領域」、「作用面(12)(13)」、「上部ジョー(11)」は、それぞれ、本件第1、第2発明の「積層材料(10)(11)」、「熱可塑性材料(3)」、「導電性材料層(4)」、「中央シール帯域(13)」、「溶融材料の堆積(15)」、「突起(突条)(9)」、「作用面(8)」、「加熱棒(7)」に相当するから、本件第1発明と甲5発明とは、「積層材料同士を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層と、導電性材料層とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層を有するようになっているものにおいて、前記方法は、積層材料同士を、中央シール帯域とその両側シール帯域に沿って重ね合わせ、前記熱可塑性材料層の表面が前記両シール帯域以内で互いに接触させるようにする段階と、前記熱可塑性材料層を含む積層材料同士を、前記両シール帯域以内で圧して該熱可塑性材料層の融点まで加熱して、当該熱可塑性材料層を溶融材料とし、同時に前記熱可塑性材料層を前記中央シール帯域において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層の溶融材料を、前記中央シール帯域以内の前記導電性材料層の表面から流出させ、前記シール帯域の外側の前記熱可塑性材料層の溶融していない材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、これにより前記両側シール帯域の端部に前記溶融材料の堆積を形成させる段階と、前記熱可塑性材料層を冷却して前記溶融材料を冷却、堆積硬化させ、前記両シール帯域以内で前記積層材料間に完ぺきなシール部分を形成させる段階と、を有し、該積層材料同士は、前記中央シール帯域を、突起で圧するようになっている包装用積層材料を互いにヒートシールする方法。」である点で一致し、「本件第1発明では、各積層材料は、熱可塑性材料と、導電性材料層と、繊維質材料の支持層とを有し、前記導電性材料層に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料を加熱溶融するようになっているのに対し、甲5発明では、各積層材料は、熱可塑性材料層と、導電性材料層とを有しているが、繊維質材料の支持層を有しておらず、常時加熱した融着ジョーにより前記熱可塑性材料を加熱溶融するようになっている点」(以下「相違点1」という。)、「本件第1発明では突起の断面がほぼ矩形であるのに対し、甲5発明では突起の断面がV形である点」(以下「相違点2」という。)、「本件第1発明では、シール帯域の外側の熱可塑性材料の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により流出した溶融材料がせき止められるようになしているのに対し、甲5発明ではこのような押圧がない点」(以下「相違点3」という。)の各点で相違する。

また、本件第2発明と甲5発明とは、「積層材料をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層と、導電性材料層とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層を有し、前記熱可塑性材料層を、中央シール帯域及びその両側シール帯域に沿って互いに重ね合わせるとともに、該両シール帯域以内で互いに接触させ、前記積層材料同士を両シール帯域内でシールジョーと対向ジョーとの間で圧して加熱し、溶融した熱可塑性材料を冷却固化させるようにして、前記積層材料同士をヒートシールするための装置において、前記シールジョーの作用面は、前記両側シール帯域に沿って、前記熱可塑性材料層の一つに押し付けられるようになっており、前記作用面には、突条が設けられ、前記中央シール帯域以内において突条で前記熱可塑性材料層を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層は、前記シール帯域内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域の外側の前記熱可塑性材料層の溶融していない部分によりせき止められるようになっている積層材料のヒートシール装置。」である点で一致し、「本件第2発明では、各積層材料は、熱可塑性材料層と、導電性材料層と、繊維質材料の支持層とを有し、シールジョーは、細長くかつ前記熱可塑性材料層を含む前記積層材料を、前記両シール帯域に沿って、対向ジョーに対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体と、該本体の平らな押圧表面に形成された溝と、該溝内に嵌合され、且つ前記本体の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層を加熱するための導電性加熱棒とを含んでいるのに対し、甲5発明では、各積層材料は、熱可塑性材料層と、導電性材料層とを有しているが、繊維質材料の支持層を有しておらず、シールジョーは、細長くなく、かつ本体、溝及び導電性加熱棒を含んでいない点」(以下「相違点4」という。)、「本件第2発明では突起の断面がほぼ矩形であるのに対し、甲5発明では突起の断面がV形である点」(以下「相違点5」という。)の各点で相違する。

(2)  相違点1、4についての検討

ア 審決は、本件第2発明と甲6発明とを対比して、「甲6号証に記載されたものは、・・・前述の本件第2発明における必須の構成要件のうち、『積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し』、『(シールジョー(5)は、)熱可塑性材料層(3)を含む前記積層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)(を有する)』、『(シールジョー(5)は、)本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝(を有する)』、『(シールジョー(5)は、)該溝内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱棒(7)とを含み、』、・・・を欠くものである。」(審決書61頁8行~63頁12行)と認定した。

しかしながら、本件第2発明の両シール帯域(13、14)は、中央シール帯域とその両側のシール帯域のことであるから、甲6発明のシール帯域7に相当する。本件第2発明の細長いシールジョー(5)、対向ジョー(12)は、それぞれ甲6発明の加圧ユニット4、加圧ユニット5に、本件第2発明の本体(6)は、甲6発明における加圧ユニット4からコイル3及びフェライト・コア8を除いたものに相当し、この本体(6)に相当するものは、加圧ユニット5に押し付けるための平らな押圧表面を有している。また、甲6発明において、本件第2発明の導電性加熱棒(7)に相当するものはコイル3であり、甲6引用例図面第1図に示されているとおり、コイル3は上記平らな押圧面に形成された溝内に嵌合され、同押圧表面に一致するようにされた作用面を有している。

したがって、審決の上記認定は誤りである。

イ そうすると、甲6発明の「加圧ユニット4」、「加圧ユニット5」、「コイル3」は、それぞれ本件第1、第2発明の「シールジョー(5)」、「対向ジョー(12)」、「導電性加熱棒(7)」に相当し、また、甲6発明の「包装材料6」、「熱可塑性材料より成る内側シール層2」、「金属フオイル層1」、「紙又はカートン等より成る基礎層10」は、それぞれ本件第1、第2発明の「積層材料(10)(11)」、「熱可塑性材料層(3)」、「導電性材料層(4)」、「繊維質材料の支持層(1)」に相当する。

そして、甲6引用例には、「第1図に示された包装材料6は、紙又はカートン等より成る基礎層10、ポリエチレン又はポリプロピレン等の熱可塑性材料より成る内側シール層2、好ましくはアルミニウム・フオイルより成る金属フオイル層1・・・(中略)・・・によって構成されている。」(審決書42頁6~11行)、「シール作業は加圧要素としての加圧ユニツト4、5を互いに圧接させることによって実施される。前記操作によって、両加圧ユニツト間に配置されているチユーブは扁平にされ、熱可塑性シール層2は互いに対向させられ、相互に圧せられることになる。そして両加圧ユニツト4、5が独自の加圧位置に達すると、0.5MHzと2MHzの間の高周波交流好ましくは約1.5MHzの高周波電流が、図示していない高周波発生装置から前記動作コイルを経て導入され、金属フオイル層1を通過する高周波電界がコイル3によって発生する。」(同42頁16行~43頁6行)、「金属フオイル層1内に発生した熱は、隣接の熱可塑性材料層2に伝えられ、これらの層2は溶融して均質に接着する。前記の接着部は、交流磁界を絶つた後、冷却され機械的耐久性あるシール部7を形成する。」(同43頁8~12行)との記載がある。

そうすると、甲6引用例には、包装材料のシール装置であって、各積層材料は、熱可塑性材料と、導電性材料層と、繊維質材料の支持層とを有し、導電性材料層に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料を加熱溶融するようになっており、また、甲6引用例図面に示されているとおり、シールジョーは、細長く、かつ、前記熱可塑性材料層を含む前記積層材料を、前記両シール帯域に沿って、対向ジョーに対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体と、該本体の平らな押圧表面に形成された溝と、該溝内に嵌合され、且つ前記本体の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層を加熱するための導電性加熱棒とを含んでいるもの、すなわち本件第1発明の相違点1に係る構成及び本件第2発明の相違点4に係る構成が開示されている。そして、甲5発明に甲6発明の上記構成を適用して、相違点1、4につき本件第1、第2発明のようにすることは当業者にとって容易になし得ることである。

この点につき、審決は、「甲第5号証に記載されたものは加熱ジョーからの単なる熱伝導により熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明におけるものは高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるので、そもそも両者は加熱方式を異にする」(審決書57頁13~末行)、「甲第6号証に記載された技術とその他の前記各甲号証に記載された技術とは加熱方式を異にするものであるから、これらの技術を組み合せることが当業者にとって容易になし得たものということはできず、」(同71頁4~8行)と判断する。

しかしながら、実願昭51-68836号(実開昭52-161156号)のマイクロフィルムに「本考案によるシーラの構造はヒートシール方式によるほか、インパルスシール、高周波加熱、超音波溶接等に用いても効果がえられる。」(甲第16号証4頁9~11行)との記載があるように、優先権主張日当時、甲5発明の加熱方式も、高周波加熱方式も、いずれも加熱方式として周知慣用の技術であったところ、本件分割出願に係る特公平2-42055号公報に「アルミニウムはくを含む積層材料の高周波溶接を可能とするために、棒7内の材料を介して、積層材料を加熱する領域を高周波方式などの電源に接続することができる。アルミニウムはくまたはその他の導電性の層を含まない包装積層材料を一緒に接合すべき場合には、積層材料を加熱する領域または棒7を加熱し、また例えば電気抵抗材料でこれを構成することもできる。」(甲第2号証の2第5欄末行~6欄8行)と記載されているとおり、アルミニウム箔のような導電性材料層を含む、含まないの如何にかかわらず、すなわち、加熱方式の如何にかかわらず、作用面に突起(突条)を有するシールジョーを用いることができるとされていたのであるから、甲5発明に、甲6発明の高周波加熱の技術を適用することは、当業者にとって極めて容易である。

(3)  相違点2、5についての検討

甲7引用例図面第4図(ヒートシーラ21)、甲8引用例の「上型1の印圧面3は、その外周縁方向に、印圧面4に対して間隙が大きくなるように傾斜させてある。・・・この傾斜は必ずしも直線上でなくともよく、・・・階段状にすることができる。」(甲第8号証3頁12~18行)との記載及び図面第1図、甲10引用例図面第2、第3図(ジョー(20))及び甲13引用例図面第3、第4図(シールジョー(13))には、いずれも断面矩形の突条(突起)の構成が開示されており、この構成を甲5発明に適用して、相違点2、5につき本件第1、第2発明のようにすることは当業者にとって容易になし得ることである。

審決は「甲第8号証における『(この傾斜は)階段状にすることができる。』なる記載が『断面がほぼ矩形の突起』の例証となるとも認められない。」(審決書65頁5~8行)とするが、甲8引用例第1図に記載された印圧面3の傾斜を階段状としたものが、本件分割出願に係る特公平2-42055号公報(甲第2号証の2)の図面第4図に図示された実施例2の突条9とほぼ同様の実質上断面が矩形の突起となることは明らかであり、審決の認定は誤りである。

(4)  相違点3についての検討

本件第1発明では、シール帯域の外側の熱可塑性材料の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により流出した溶融材料がせき止められるようになしているのに対し、甲5発明ではこのような押圧はないものの、シール帯域の外側の熱可塑性材料の溶融していない材料により流出した熱可塑性材料がせき止められるようになっており、本件第1発明と同様、これにより両側シール帯域の端部に溶融材料の堆積を形成させるものであるから、両者は実質的に異ならない。

のみならず、甲11引用例に「ポリエチレン製の2枚のフィルム(7)と(8)の融着を実施するために、これらのフィルムを2つのジョー(A)と(B)の間に挿入し、そして、まず第1に2つのジョーを互いに近づける。加熱素子(2)は融着すべき中央部(9)に圧力を加え、しかもポリエチレンを融点まで加熱し、一方、脇締具(3)と(4)は、融着すべき部分の縁(10)と(11)に圧力を加え、しかもこれらを冷却する。溶融したポリエチレンは脇締具(3)と(4)の方向へ、2つの加熱素子(2)によって追い出される。このプラスチック材の移動は脇締具によって停止され、したがって、融着縁に厚い補強部(12)が形成される。」(甲第11号証訳文2項)と、甲12引用例に「図面は熱可塑性層(1)でコーティングされかつシール帯域内でヒートシールによって結合される2枚のシート(2)を示す。熱可塑性層が互いに向かい合うように2つのシールジョー(3)によって2枚のシート(2)同士が圧され、そのシールジョーの表面の一部がヒート・エレメントによって加熱される。ジョーの対向する表面はその加熱部において一対の対向する溝(5)に向かって広がっている。ジョーの対向する表面同志の間隔は、ヒート・エレメシト(4)に対して溝(5)の反対側の方がヒート・エレメント(4)に隣接する側の方より狭い。チャンネル(6)は溝(5)の近くに平行して設けられ、溝(5)および溝(5)に隣接するジョーの部分を冷却するためにジョーに冷媒を通すようにできている。エレメント(4)は連続して加熱され、ジョー(3)がシート(2)に圧せられるとき、熱可塑性材料(1)がジョー(3)によって加熱されたシール帯域の部分内で溶融する。シール帯域の加熱部内でジョー(3)の対向する表面は溝(5)に向かって広がっているので、溶融ざれた熱可塑性材料(1)はジョー(3)が冷却されそれ自体が早く固体化する溝(5)に向かって押し出される。ジョー(3)が離れるとき、ジョイント全体にのびかつ熱可塑性材料によってできているすでに固体化した塊(7)が形成された部分が存在し、その部分はシート同士を確実に結合させる。」(甲第12号証訳文2項)と、それぞれ記載されており、これらの記載によれば、甲11引用例および甲12引用例には、シール帯域の外側の熱可塑性材料の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により溶融材料がせき止められる構成が開示されている。そして、この構成を甲5発明に適用して、相違点3につき本件第1発明のようにすることは当業者にとって容易になし得ることである。

(5)  以上のように、本件第1、第2発明は、甲5発明に、甲6~甲8、甲10、甲13引用例に開示された技術、及び必要があれば甲11、甲12引用例に開示された技術を適用することにより、当業者が容易に発明することのできるものである。また、甲5発明及びこれらの引用例に記載された発明は本件第1、第2発明と技術分野を同じくするものであるから、「それらを組み合わせて本件第1及び第2発明の構成を採用すべき技術的必然性を見出すことができない。」(審決書71頁11~13行)とすることも誤りである。

さらに、本件第1、第2発明の「強みと優れた密封性をもつ」(同頁15~16行)効果も、十分予想できるものであって、格別のものではない。

したがって、本件第1、第2発明が、甲5~甲8、甲10~甲13引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないとした審決の判断は誤りである。

第4  被告の反論の要点

審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。

1  取消事由1(第1次補正に係る明細書を基準として本件訂正請求を認めたことが誤りであるとの主張)について

審決は、第2次補正が実質上特許請求の範囲を拡張するものであると認定し、平成5年法律第26号による改正前の特許法42条により、第2次補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなすとしたが、第1次補正については要旨変更その他の違法事由があって同条に当たることを認定してはない。そうすると、第2次補正がされなかった特許出願に当たるのは、第1次補正に係る明細書に基づくものであって、これが、平成6年法律第116号による改正前の特許法134条2項にいう「願書に添付した明細書又は図面」となることは当然であり、審決の判断に何ら誤りはない。

原告の主張は、第2次補正が実質上特許請求の範囲を拡張するものであるとの、本件無効審判における審決の認定が、拒絶査定に対する不服の審判に影響し、その判断を拘束変更するとの立論を前提とするものであって、その点に誤りがある。

2  取消事由2(本件訂正請求の訂正事項が特許請求の範囲の減縮に当たらないことを看過した誤りがあるとの主張)について

原告は、訂正前の特許請求の範囲第1項の「積層材料を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」との記載を、「積層材料同士(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」と訂正すること、及び同第3項の「積層材料をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、」との記載を、「積層材料(10、11)をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、」と訂正することが、不明瞭な記載となっただけで、減縮に当たらないとして、審決の「訂正前には特許請求の範囲において加熱溶融する手段が限定されていなかったのに対し、訂正により導電性材料層に高周波を印加する主旨の限定を加えることをその骨子とするものであるので、これは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。」(審決書25頁14行~26頁1行)、「今回の訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと認められるし、しかも、『熱可塑性材料の外層(3)』と『熱可塑性材料層(3)』とは、ともに同一の番号『(3)』が付されていることからみて、両者は同一のものをやや異なる表現で単に言い代えたものにすぎないことは明らかというべきある」(審決書27頁19行~28頁6行)との認定判断が誤りであると主張する。

しかしながら、訂正明細書の特許請求の範囲第1項及び第3項の上記各記載において、〈1〉「各積層材料」が積層材料(10)と積層材料(11)とを指すこと、〈2〉積層材料(10)と積層材料(11)とが、それぞれ、熱可塑性材料層(3)と導電性材料層(4)と繊維質材料の支持層(1)とを有すること、〈3〉「熱可塑性材料層(3)」と「熱可塑性材料の外層(3)」とが同じものを指し、積層材料(10)と積層材料(11)のそれぞれの一表面は熱可塑性材料の外層(3)で覆われていること、〈4〉熱可塑性材料の外層(3)は、積層材料(10)と積層材料(11)との一表面を覆っていない積層材料、すなわち比較的剛性の中心支持層である外層(3)以外の積層材料の融点よりも低い融点を有すること(ここで、外層(3)が外層(3)以外の積層材料の融点よりも低い融点を有するとは、外層(3)が溶ける温度となっても、外層(3)以外の積層材料は溶けずにそのままの状態を保持することをいう。)は、当業者が、技術常識に基づき、特許請求の範囲に記載されている技術的思想を積極的に理解しようとしてこれを読めば、何の疑問もなく理解し得るところである。

そして、このように理解するのが正当であることは、訂正明細書の「本発明は、シール帯域内の熱可塑性材料の外層を互いに接触させてこれらを一時的にシール温度に加熱し、融着するようにして包装積層材料をヒートシールする方法に関する。」(甲第2号証の1添付明細書3頁8~10行)、「包装材料は、両側を均質のプラスチック材料の薄い層で覆われた、比較的剛性の中心支持層を具備する。この材料は、アルミニウムはくまたはその他の材料を具備することもできる。この型の全ての包装積層材料に共通の特徴は、これらがその外側、少なく共内容物に面する側に熱可塑性材料、通常はポリエチレンの層を具備し、それによって互いに対向した積層材料の二つの部分を熱と圧力とによって共に液密状態にシールできることである。」(同頁15~20行)、「第1図に示す包装積層材料は、牛乳およびその他の飲料の包料にしばしば用いられる形式のものである。この包装積層材料は全体の厚さが0.4ないし0.5mmで、繊維状物質の中央支持層1を具備し、この層1はその両側を熱可塑性材料、特にポリエチレン、の比較的薄い均質な層2、3で覆われている。外側のプラスチック層3の一方と支持層1との間にはさらにアルミニウムはくの層4が存在し、この層は熱可塑性材料(図示せず)によって支持層に接合され、外側の均質な層3によって完全に覆われる。外側の熱可塑性の層2、3があるために、互いにシールされるべき各部分を一緒に押し付け、同時に熱可塑性材料をその溶融温度にまで加熱することにより、包装積層品を容易にヒートシールすることができる。」(同5頁14~23行)、「ジョーが互いに向き合って動き、その間に置かれた包装積層材料10、11を一緒に押し付け始めると同時にシールジョー5の棒7が高周波電源に接続される。このようにして包装積層材料のアルミニウム層4内に交番磁界が誘導され、それによってこれらが棒7の表面に対応する領域内で隣接する熱可塑性の層の溶融温度よりかなり高い温度にまで加熱される。生成された熱はアルミニウム層間に位置する熱可塑性の層3に直接伝達され、それによってこれらが溶融し、流体となる。」(同7頁4~10行)との各記載および図面の記載によっても裏付けられる。

したがって、上記各訂正が、不明瞭な記載となっただけで、減縮に当たらないとする原告の主張は誤りである。

3  取消事由3(本件発明の要旨の認定が誤りであるとの主張)について

審決が本件訂正請求を認めたことにつき、原告主張の誤りはなく、したがって、本件発明の要旨を、訂正明細書記載の特許請求の範囲に記載されたとおりのものとした審決の認定に何らの誤りもない。

4  取消事由4(進歩性の判断が誤りであるとの主張)について

本件第1、第2発明が、甲5~甲8引用例、甲10~甲13引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないとした審決の判断は、次のとおり何ら誤りがない。

(1)  本件第1、第2発明と甲5発明との対比

甲5発明における「熱融着部(14)(15)」は、「層(6)と(8)の溶けた材料が毛細管現象で縮み、中央層・・・を去って横方向に分かれ」(甲5号証訳文3頁8~9行)ることにより形成されるものであるのに対し、本件第1発明におけるシール部分の形成は、熱可塑性材料層(3)の溶融材料を中央シール帯域(13)において突起(9)の先端面でさらに強く圧して中央シール帯域(13)から流出させ、シール帯域(14)の外側の押圧され溶融していない材料により流出した溶融材料がせき止められて堆積(15)を形成させることにより両シール帯域内で形成され、また、本件第2発明におけるヒートシールは、細長いシールジョーの作用面(8)が両側シール帯域(14)に沿って熱可塑性材料層(3)を押し付けるとともに、突条(9)の先端面で中央シール帯域(13)以内を押し付けることによって溶融した熱可塑性材料を導電性材料層(4)の表面より流出させ、これをシール帯域(13、14)の外側の溶融していない熱可塑性材料層(3)によりせき止めることによってシールされるものである。

また、審決の認定のとおり、甲5発明は「ジョー(9)と(11)により押圧された結果、溶けた熱可塑性材料が毛細管現象で縮み、また、層(5)と(7)及び熱融着部(16)によって画定された2つの空洞(17)を形成する、のに対し、本件第1及び第2発明におけるものは、突起で押圧することにより流出し、また、シール帯域の中の高圧の領域には不純物の無い非常に薄い熱可塑性材料の層が残るものであるので、両者は、熱可塑性材料の流出形式、及び、シール帯域の中の高圧の領域に熱可塑性の層が残るか否か、の点でシールの内容を異にする」(審決書58頁1~12行)ものである。

この点について、原告は、甲5引用例の「2つの空洞(17)は、それぞれ層(5)と(6)および(8)と(7)にきわめて薄い皮膜として以前に存在しかつこれらの層を相互に接着せしめるために使用された、変形された成層材によってうめられたことが解るだろう。」との記載を根拠として、甲5発明においても、空洞(17)がそのまま残っているわけではなく、成層材によって埋められていると主張する。しかし、甲5発明において、成層材は、容器本体の外層(5)と熱融着可能な接触層(6)との間、及び蓋の外層(7)と熱融着可能な接触層(8)との間を相互に接着せしめるために使用され、きわめて薄い皮膜として存在していたというのであるから、接着剤又はアンカーコート剤と考えられる。そして、成層剤の皮膜は極めて薄いものであるから、その体積はほとんどなく、溶けた熱可塑性材料が中央層を去った後の空洞を埋め尽くすことはできない。また、成層剤が接着剤であるにせよ、アンカーコート剤であるにせよ、甲5発明の熱融着可能な材料として用いられているポリエチレン等に比べてその融点は高いので、熱や加圧によって、縮み、屈曲し、カールし、破断して、「変形」することはあっても、溶融することはないから、空洞を隙間なく埋め尽くすこともない。結局、甲5引用例の「2つの空洞(17)は、・・・変形された成層材によってうめられた」とは、縮み、屈曲し、カールし、破断した非常に薄い皮膜が空洞(17)に残存している状態を示しているのであって、空洞(17)は基本的には物質のない空間である。

したがって、本件第1発明と甲5発明とが「前記熱可塑性材料層を前記中央シール帯域において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層の溶融材料を、前記中央シール帯域以内の前記導電性材料層の表面から流出させ、前記シール帯域の外側の前記熱可塑性材料層の溶融していない材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、これにより前記両側シール帯域の端部に前記溶融材料の堆積を形成させる」点で一致し、本件第2発明と甲5発明とが「シールジョーの作用面は、前記両側シール帯域に沿って、前記熱可塑性材料層の一つに押し付けられるようになっており、前記作用面には、突条が設けられ、前記中央シール帯域以内において突条で前記熱可塑性材料層を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層は、前記シール帯域内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域の外側の前記熱可塑性材料層の溶融していない部分によりせき止められるようになっている」点で一致するとの原告の主張は誤りである。

(2)  相違点1、4について

本件第1、第2発明の主たる特徴は、〈1〉突条対応部分(中央シール帯域)から溶融熱可塑性材料が高速に押し出されることにより、流動熱可塑性材料内に生ずる乱流によって表面酸化物や不純物が熱可塑性材料内に効果的に混合される点、〈2〉シール帯域の外方の領域で、溶融されていない、すなわち固体状態で押圧された熱可塑性樹脂層が、溶融熱可塑性材料をせき止めることにより、溶融熱可塑性材料はシール帯域領域から流出できず、上下の繊維質材料支持層と突条対応部分と固体状態の熱可塑性樹脂によって囲まれた閉鎖空間に留まって、シール帯域内の堆積部分を形成し、この中で、2つの熱可塑性の層が混合されて、シールされる点にあり、上記〈1〉、〈2〉により、強く優れたシールが得られる。

そして、本件第1、第2発明が、導電性材料層(4)に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融することとしている技術的意義は、伝熱加熱の方法では、外部から熱伝導により、繊維質材料の支持層を経て、熱可塑性材料層にまで熱を伝えるのに時間がかかり、熱可塑性材料を高速で加熱溶融できないのに対し、高周波加熱の方法では、磁界が繊維質材料の支持層を透過し導電性材料層を直接に加熱するので、シール帯域の熱可塑性材料層全体を瞬時にかつ高速で溶融できることにある。

甲6引用例には、ヒートシール装置において高周波加熱により熱可塑性材料層を加熱溶融するものが示されているが、高周波加熱を、本件第1、第2発明と同様の技術的意義において採用することは示唆されていない。

(3)  相違点2、5について

本件第1、第2発明において、中央シール帯域(13)以内において熱可塑性材料層(3)を互いに押圧するジョーの作用面(8)に設けられた突条(9)がほぼ矩形の平らな先端面を有することとしている技術的意義は、上記(2)のとおり、押圧により突条対応部分(中央シール帯域)から溶融熱可塑性材料が高速に押し出され、かつ、固体状態で押圧された熱可塑性樹脂層によってせき止められて、上下の繊維質材料支持層と突条対応部分と固体状態の熱可塑性樹脂によって囲まれた閉鎖空間に留まり、シール帯域内の堆積部分を形成することにある。

原告は、甲7引用例、甲8引用例、甲10引用例及び甲13引用例に、断面矩形の突条(突起)の構成が開示されていると主張するが、各引用例とも、上記の本件第1、第2発明の突条の技術的意義を示唆するものではない。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1(第1次補正に係る明細書を基準として本件訂正請求を認めたことが誤りであるとの主張)について

審決が、第2次補正が実質上特許請求の範囲を拡張するものであって、平成5年法律第26号による改正前の特許法17条の3が準用する同法126条2項の規定に違反しているものと認定したことは、前示第2の3のとおりである。そうすると、平成5年法律第26号による改正前の同法42条により、その補正(第2次補正)がされなかった特許出願について特許がされたものとみなされるところ、本件特許出願の経過において、第2次補正がされなかったものとした場合の特許出願が第1次補正に係る出願であることは、前示第2の1のとおりであるから、「本件発明の訂正の可否を判断するに際し、平成7年12月31日付けの訂正請求書(注、本件訂正請求書)により訂正請求される前の明細書は、出願公告後に平成4年1月23日付けで手続補正(注、第1次補正)がなされた明細書である。」(審決書15頁9~13行)とした審決の判断に誤りはない。

ところで、第1次補正後の出願に対し平成4年3月27日に拒絶査定がされ、これに対する不服審判において被告が第2次補正をした結果、本件特許がなされたことは前示第2の1のとおりである。しかるところ、原告は、本件無効審判の審決が、第2次補正が違法であると判断したことにより、本件出願に対し拒絶査定がなされた法律状態に戻らなければならないとか、不服審判において、被告が第1次補正に係る明細書記載の特許請求の範囲に基づく不服の理由を主張していないから、第2次補正が違法であると判断されれば拒絶査定に対する不服の理由が存在しないことになり、他方、手続補正には時期的制限があって、仮に本件出願が係属中に第2次補正が却下されたとすれば、被告は更に新たな手続補正をするということもできなかったから、本件出願は実質的に拒絶査定が確定したに等しいとか、第1次補正に係る明細書は、拒絶査定がされ、手続補正をすることもできないという法律状態にある、いわば質的な瑕疵のあるものであって、このような状態の明細書を基準として訂正を認めることは、訂正請求の制度を認めた法の趣旨を逸脱する等と主張する。

しかしながら、第1次補正後の出願に対し拒絶査定がされ、これに対する不服審判において、第2次補正がされ、これが却下されることもなく本件特許がなされた以上、該拒絶査定は、不服審判の確定審決によって取り消されたことが明らかであり(この場合には、原査定を取り消す旨が審決の結論文に掲げられる。)、その後、本件無効審判の審決が、第2次補正を、平成5年法律第26号による改正前の特許法17条の3が準用する同法126条2項の規定に違反しているものと認めたとしても、平成5年法律第26号による改正前の同法42条所定の効果が生ずるほかに、拒絶査定を取り消した不服審判の審決の効果が覆えるような法的効果が生ずるものと解する根拠はない。原告の前示主張は、この点を誤って、拒絶査定が復活したかのような効果が生ずることを前提とするものであって、失当というほかはない。

また、原告は、出願過程において第2次補正の違法が看過された本件特許につき訂正が認められ、特許が維持されるものとしたら、出願過程で第2次補正の違法が明らかにされた場合との均衡を著しく失するとも主張する。

しかし、平成5年法律第26号による改正前の特許法42条所定の「その補正がされなかった場合の特許出願」には、本来、当該補正の契機となった拒絶理由若しくは特許異議の申立理由又は拒絶査定の理由があって、それが特許無効の理由となる場合が少なくないことは明らかであるところ、特許無効審決が確定するまでの間に、訂正によってその無効理由を排除して特許を維持することが一般に認められているのであるから、同条が、出願公告決定後の補正が同法17条の3又は64条の規定に違反しているものと特許権の設定登録後に認められたときの効果を、「その補正がされなかった場合の特許出願について特許がされたものとみなす」とするに止めている以上、訂正によって無効理由を排除し特許を維持することを許容していることは明白である。そして、たとえ、手続補正の違法事由が看過されたにせよ、一旦は特許がなされた場合と、該手続補正の違法事由が出願過程で判明し、結局特許がなされなかった場合とで、このような異なる取扱いをすることが不合理であるということはできない。したがって、原告の前示主張も失当である。

2  取消事由2(本件訂正請求の訂正事項が特許請求の範囲の減縮に当たらないことを看過した誤りがあるとの主張)について

本件訂正請求の訂正事項〈1〉が、特許請求の範囲第1項の「積層材料を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」(審決書15頁14~18行)との記載を、「積層材料同士(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」(同18頁19行~19頁5行)と訂正すること、及び同第3項の「積層材料をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、」(同17頁7~10行)との記載を、「積層材料(10、11)をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、」(同21頁3~8行)と訂正することを含むことは、当事者間に争いがない。

しかるところ、原告は、その各訂正が、特許請求の範囲の記載を不明瞭とするものであるとし、これを理由として、本件訂正請求が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとはいえないと主張する。

確かに、各訂正後の特許請求の範囲の「各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有」し(する)との記載は、同一の符号「(3)」が振られているにもかかわらず、名称を異にする「熱可塑性材料層(3)」と「熱可塑性材料の外層(3)」とが存在し、しかも「熱可塑性材料の外層(3)」が、「その(注、積層材料の)一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の」という語句で修飾されているために、一見すると、積層材料を構成するうちの1層である「熱可塑性材料層(3)」と、積層材料の一表面を覆う「熱可塑性材料の外層(3)」とが、同じものを指すのかどうか定かとはいえない点があることは否定できない。

しかしながら、各訂正後の特許請求の範囲の前示記載によっても、「各積層材料」が積層材料(10)と積層材料(11)とを指すことが明らかであるところ、訂正後の特許請求の範囲(上記第2の2の(2)の訂正明細書記載の特許請求の範囲)第1項、第3項の記載全体を通じてみると、前掲部分以外の部分には、「熱可塑性材料層」との語句はあるが、「熱可塑性材料の外層」との語句は存在しないことに加え、特許請求の範囲第1項の「積層材料同士(10、11)を、・・・重ね合わせ、前記熱可塑性材料層(3)の表面が・・・互いに接触させるようにする」、同第3項の「前記熱可塑性材料層(3)を、・・・互いに重ね合わせるとともに、・・・互いに接触させ、」との各記載から、「熱可塑性材料層(3)」が積層材料の最外層を成していることを明らかに読み取ることができ、さらに、「熱可塑性材料層(3)」と「熱可塑性材料の外層(3)」とに同一の符号「(3)」が振られていることを併せ考えるると、「各積層材料は、その一表面を覆い・・・熱可塑性材料の外層(3)を有」し(する)との記載が、積層材料を構成するうちの1層である「熱可塑性材料層(3)」が積層材料の最外層(表面)を成していることを意味するものであること、すなわち、「熱可塑性材料層(3)」と「熱可塑性材料の外層(3)」とが同じものを指していることが明白である。

そして、さらに、訂正後の特許請求の範囲第1項の「積層材料同士(10、11)を、・・・重ね合わせ、前記熱可塑性材料層(3)の表面が・・・互いに接触させるようにする」、「熱可塑性材料層(3)を含む積層材料同士(10、11)を、・・・圧して該熱可塑性材料層(3)の融点まで加熱して、当該熱可塑性材料層(3)を溶融材料とし」、「前記熱可塑性材料層(3)を・・・さらに強く圧して、前記熱可塑性材料層(3)の溶融材料を、・・・前記導電性材料層(4)の表面から流出させ」、「前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし」、「これにより・・・前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記導電性材料層(4)の表面同士を密着させる」、「前記熱可塑性材料層(3)を冷却して前記溶融材料を冷却、堆積硬化させ、・・・前記積層材料間に完ぺきなシール部分を形成させる」等の各記載、及び同第3項の「前記熱可塑性材料層(3)を、・・・互いに重ね合わせるとともに、・・・互いに接触させ、」、「積層材料同士(10、11)を・・・圧して加熱し、溶融した熱可塑性材料を冷却固化させるようにして、前記積層材料同士(10、11)をヒートシールするための装置」、「前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱する」、「前記熱可塑性材料層(3)は、・・・溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、・・・せき止められる」等の各記載からは、特許請求の範囲記載の発明が、各積層材料(10、11)を、それぞれその最外層を成す熱可塑性材料層(3)を接触させて重ね合わせて押圧し、熱可塑性材料層(3)の融点まで加熱して、これを溶融、流出させたうえ、せき止めて冷却、堆積硬化させるとともに、導電性材料層(4)の表面同士を密着させる積層材料のシール方法(請求項第1項)及びシール装置(同第3項)であることが理解できるところ、かかる理解を基にし、かっ積層材料を構成するうちの1層である「熱可塑性材料層(3)」と「熱可塑性材料の外層(3)」とが同じものを指しているとしたうえで、「各積層材料は、・・・該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有」し(する)との記載に接すれば、その「該積層材料の融点」とは積層材料を構成する各層のうち熱可塑性材料層(3)以外の各層を意味すること、したがって、該記載は積層材料を構成する各層のうちで熱可塑性材料層(3)の融点が最も低いことを表す趣旨であることが容易に看取されるものである。

そうすると、各訂正後の特許請求の範囲の「各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有」し(する)との記載は、その部分のみを一見すると、不明瞭な記載ともとられかねないものであって、好ましくはないが、特許請求の範囲全体の記載との関係においては、一義的に解釈することができるものであるから、これをもって、各訂正が、特許請求の範囲の記載を不明瞭とするものであるとすることはできず、したがって、本件訂正請求が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとはいえないとする原告の主張は誤りである。

3  取消事由3(本件発明の要旨の認定が誤りであるとの主張)について

前示1、2及び後記4のとおり、審決が本件訂正請求を認めたことにつき原告主張の誤りはなく、したがって、本件発明の要旨を、訂正明細書記載の特許請求の範囲に記載されたとおりのものとした審決の認定に誤りはない。

4  取消事由4(進歩性の判断が誤りであるとの主張)について

(1)  本件第1、第2発明と甲5発明との対比について

ア 訂正明細書記載の特許請求の範囲第1項(本件第1発明)及び第3項(本件第2発明)は、前示第2の2の(2)のとおりである。

そして、訂正請求書(甲第2号証の1)に添付された訂正明細書記載の発明の詳細な説明には、「本発明の更に目的とするところは、たとえ包装積層材料が例えば、酸化物、包装内容物の残留物、あるいは残渣のような不純物で覆われていても最適なシールを可能とする包装積層材料をヒートシールする方法を提供することにある。本発明の以上その他の目的は、シール帯域内の熱可塑性材料の外層を互いに接触させ一時的にシール温度まで加熱し融着させるようにした熱可塑性材料を有する包装積層材料をヒートシールする方法において、シール帯域内の熱可塑性の層を互いに強力に押しつけ溶融熱可塑性材料を前記領域の中の高圧の領域から隣接部分へ流出させる段階を有することを特徴とする本発明の方法によって達成される。この方法によれば、溶融熱可塑性材料がシール帯域の高圧領域から隣接部分へ押しやられる間に、溶融熱可塑性材料は可能な限りの不純物を混入連行し、一方、互いに対向して置かれた積層材料の二つの熱可塑性の層は、完全な融合が達成される程度にまで効果的に混合される。シール帯域の中の高圧の領域には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層のみが残り、これが包装積層材料の支持層に接合された導電性材料層と密着し、一方シール帯域の隣接領域内では双方の熱可塑性の層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分によって強みと優れた密封性が保証される。本発明の更に目的とするところは、前述の形式の包装積層材料をヒートシールする装置を提供することにある。この装置は、シールされるべき材料がたとえ完全に不純物の無いものでなくても、最適な性状のシールが得られることを保証するものである。」(同号証の1添付明細書4頁8~27行)、「本発明によるこの方法ならびにこの装置の好適な実施例を添付図を参照して、詳細に説明する。第1図に示す包装積層材料は、・・・繊維状物質の中央支持層1を具備し、この層1はその両側を熱可塑性材料、特にポリエチレン、の比較的薄い均質な層2、3で覆われている。外側のプラスチック層3の一方と支持層1との間には更にアルミニウムはくの層4が存在し、」(同5頁12~19行)、「第3図は、本発明による方法と装置とによって二つの包装積層材料を一緒にシールする際のシール順序を示す。二つの包装積層材料・・・がシールに備えて、それらの外層の熱可塑性の層3が互いに対向するように接合されている。包装積層材料は、シールジョー5と、包装積層材料の反対側に対向して位置する対向ジョー12・・・とによって一緒に押し付けられる。・・・ジョーが互いに向き合って動き、その間に置かれた包装積層材料10、11を一緒に押し付け始めると同時にシールジョー5の棒7が高周波電源に接続され、・・・棒7の表面に対応する領域内で隣接する熱可塑性の層の溶融温度よりかなり高い温度にまで加熱される。生成された熱はアルミニウム層間に位置する熱可塑性の層3に直接伝達され、それによってこれらが溶融し、流体となる。包装積層材料を突起9と同じ高さで一緒に押しやる高い圧力・・・のために、溶融熱可塑性材料はシール帯域13、14全体の中の高圧の領域13から隣接部分14に走り、または流れ込む。シール帯域13、14の外方の領域で互いに対向して位置する熱可塑性の層3は引き続き固体の状態を保ち、互いに対向して押し付けられるので、溶融熱可塑性材料はそれ以上シール帯域外方に流出できずに参照番号14で示される二つの帯域に溜まり、ここで細長い圧力帯域13と平行に延びるふくらみ部分15を形成し、その中で互いにシールされた二つの層が混合される。帯域13内には表面の凹凸等のために絞り出され得ない微量のプラスチック材料のみが残り、一方、この帯域の両側に形成されたふくらみ部分15にはよく混合されたプラスチックの余剰分が包含され、実用上充分な強さのシールが二つの層の間に得られる。帯域13から帯域14に至る流れが非常に速いので、流動するプラスチック材料内に生ずる乱流によって互いに対向して位置する二つの層の間からのプラスチック材料のよい混合が保証され、したがって表面に存在するいかなる表面酸化物またはその他の不純物(例えば包装内容物の残留物からの)でもプラスチック内に効果的に混合され、それ故シールの強さを損なうような不純物のいかなる凝集性の膜も残存することがない。」(同6頁23行~7頁25行)との記載がある。

これらの記載によると、本件第1発明の「熱可塑性材料層(3)を前記中央シール帯域(13)において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層(3)の溶融材料を、前記中央シール帯域(13)以内の前記導電性材料層(4)の表面から流出させ、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記導電性材料層(4)の表面同士を密着させる段階」との構成、及び本件第2発明の「前記中央シール帯域(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっている」構成の技術的意義は、対向して位置する二つの積層材料の間の左右の両側シール帯域(14)内に、不純物を埋没混合した溶融熱可塑性材料をもって堆積を形成するとともに、左右の両側シール帯域(14)の間にあって高圧が加わる中央シール帯域(13)内には、不純物を含まない非常に薄い熱可塑性材料の層を形成して、両積層材料をシールすることにあるものと認められる。

イ 他方、甲5引用例に、「本発明は、熱融着可能な材料よりなる接着層と、ある程度の機械強さを有しかつ軟化点がその熱融着可能な材料よりも高い材料よりなる外層とを備えた形式の層状形成材料の融着方法、およびこの方法により熱融着された層状形成材料に関する。本発明はまた、充填後に閉じ、この方法により融着した層状形成材料よりなる容器にも関する。」(審決書35頁末行~36頁7行)、「本発明によれば、これらの目的ならびに他の目的を達成するのには、特殊外形の融着ジョーを用いて層状形成材料の各熱融着可能な層を相互に押しつけ、これによって分離線から出発し、その両側に広がる漸進的な熱融着の動きによる融着の故に、各接触層を強制的に横に分離する。こうして別々の2つの融着が行われ、それぞれ互いに押しあっている熱融着可能な層の表面にたまたま存在する汚れ粒子を包みこむ。さらに、別々の2つの熱融着部が得られるので、これらの融着部のうちの1つに現れるかもしれない亀裂が他の融着部へ広がる傾向がない。」(同36頁17行~37頁8行)、「本発明の好ましい実施例によれば、層状に形成された材料には、薄い金属箔よりなる外層と、熱可塑性材料よりなる接触層が含まれている。層状に形成された材料を食料品の包装に使用する場合は、ポリプロピレン被覆の薄いアルミニウム箔によって優れた結果が得られる。」(同37頁9~14行)、「本体(1)の上縁にはフランジ(3)があり、これに蓋(2)の対応フランジ(4)が熱融着される。容器本体(1)はある程度の機械強さをもつ材料の外層(5)と、熱融着可能な接触層(6)よりなる層状体でできている。蓋(2)の材料は、これと類似の構造をしており、ある程度の機械強さをもつ外層(7)と、熱融着可能な接触層(8)とからなる。」(同39頁3~10行)、「蓋(2)を容器本体(1)上に置き、かつ充填容器を、そのフランジが加熱ジョー(9)と(11)の間にくるように配置すると、上部ジョー(11)を層状形成材料(5)(6)および(7)(8)を圧縮する位置まで下げる。層(5)と(7)で伝達される熱により、ジョー(9)と(11)の間に含まれる中央領域において、層(6)と(8)の融着可能材料は溶け、この領域は、圧縮を続けている間徐々に広がる。この圧縮は、層(6)と(8)の溶けた材料が毛細管現象で縮み、中央層(第2図)を去って横方向に分かれ、この領域の両側で熱融着部(14)と(15)を形成するまで続けられる。層(6)と(8)の間にたまたま存在する汚れ粒子(16)は、その縮み移動の際に、溶けた材料の中に完全に埋没してしまう。第2図に示し、かつ層(5)と(7)および熱融着部(16)によって画定された2つの空洞(17)は、それぞれ層(5)と(6)および(8)と(7)にきわめて薄い皮膜として以前に存在しかつこれらの層を相互に接着せしめるために使用された、変形された成層材によって埋められたことが分るだろう。第2図において、図示されているように、層(5)と(7)が、分離線に沿って、たとえ接触していても、これらの層の間には真の接触は存在しないのである、割に高い圧力のもとでも、或る量の成層材は分離線上に残存している。その結果、融着ジョーが相互に離間すると、蓋(2)は容器本体(1)に熱融着され、菌に対し気密となる。」(同39頁18行~41頁7行)との各記載があることは、当事者間に争いがない。

甲5引用例のこれらの記載及び図面第1、第2図によると、甲5発明においては、ジョー(9)と(11)によって加熱押圧されることにより、2つの層状形成材料の互いに接触する熱融着可能な接触層(6)(8)が溶融し、ジョー(9)と(11)の間に含まれる中央領域から毛細管現象によって溶融材料が左右両横方向に別れ去り、中央領域の左右外側の領域にそれぞれ不純物を埋没混合した熱融着部(16)を形成するものであるが、その際、該熱融着部(16)と、接触層(6)(8)が溶融して流出した後の上下の層状形成材料の外層(5)と(7)とによって画定される2つの空洞が形成されるものとされている。もっとも、甲5引用例の前示記載によれば、該空洞は変形された成層材によって埋められるものとされているが、隙間なく完全に埋められるものであるかどうかは必ずしも明らかではないうえ(仮に、甲5引用例に「第2図は、シーリング作業中の同一図である。」との記載があるとしても、シーリング作業完了後に空洞が完全に埋められるかどうか明らかでないことに変わりはない。)、空洞を埋める成層材は、層(5)と(6)および(8)と(7)にきわめて薄い皮膜として以前に存在しかつこれらの層を相互に接着せしめるために使用されたものであるから、接着剤又はアンカーコート剤の類であることが考えられ、少なくとも接触層(6)(8)を形成していた熱融着可能な材料(熱可塑性材料)でないことは明らかである。甲5引用例の前示記載中には、「層(5)と(7)が、分離線に沿って、たとえ接触していても、これらの層の間には真の接触は存在しないのである、割に高い圧力のもとでも、或る量の成層材は分離線上に残存している。」とする部分があるが、この場合も、外層(5)と(7)との間を埋めるものは該成層材であって、熱融着可能な材料とはされていない。

この点につき、原告は、訂正請求書(甲第2号証の1)に添付された訂正明細書の「帯域13内には表面の凹凸等のために絞り出され得ない微量のプラスチック材料のみが残り」(同号証の1添付明細書7頁17~18行)との記載を引用し、甲5発明においても、加圧前の高圧の領域に存在するものは熱可塑性材料であるから、技術常識上、加圧後も熱可塑性材料が成層材とともに分離線上に微量残存しかつ空洞を埋めるものと考えざるを得ないと主張し、あるいは空洞(17)を埋めた成層材の間に隙間が生じようとしても、その隙間には溶融された熱可塑性樹脂が流入せざるを得ないとも主張する。しかし、甲5引用例に分離線上又は空洞に熱融着可能な材料が残存し、あるいはこれによって埋められる旨の記載はないうえ、溶融した熱融着可能な材料の毛細管現象によって生じた空洞に、溶融した熱融着可能な材料が再び流入するかどうか疑わしく、さらに、仮に分離線上又は空洞に、成層材とともに熱融着可能な材料が残り、又はこれによって埋められたとしても、それが、本件第1、第2発明において中央シール帯域(13)内に形成される不純物を含まない熱可塑性材料の非常に薄い層と異なるものであることは明らかである。

ウ そうすると、審決の本件第1、第2発明と甲5発明との対比のうち、少なくとも、「両者は、・・・シール帯域の中の高圧の領域(注、中央シール帯域(13))に熱可塑性の層が残るか否か、の点でシールの内容を異にするものである。」(審決書58頁9~12行)との認定には誤りがなく、審決のその部分の認定が誤りであって、本件第1、第2発明と甲5発明とがその点で実質的に異なるところはないことを前提とする原告の本件第1、第2発明と甲5発明との一致点及び相違点の主張には、該相違点を看過した誤りがあるものといわざるを得ない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件第1、第2発明が、原告主張のように、甲5発明に、甲6~甲8、甲10~甲13引用例に開示された技術を適用することにより、当業者が容易に発明することができたものということはできない。

(2)  そうすると、審決が、訂正明細書記載の本件第1、第2発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものと判断して本件訂正請求を認めたこと、さらに、本件発明の要旨を訂正明細書記載の特許請求の範囲に記載されたものとする認定を経て、特許法29条2項、平成6年法律第116号による改正前の同法123条1項1号により本件特許を無効とすることができないと判断したことに、原告主張の誤りはない。

5  以上の次第で、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 山田知司)

平成6年審判第5323号

審決

徳島県板野郡北島町太郎八須字西の川10番地1

請求人 四国化工機 株式会社

東京都中央区八丁堀4-13-5 幸ビル7階 廣田特許事務所

代理人弁理士 廣田雅紀

大阪府大阪市中央区西心斎橋1丁目13番18号 イナバビル3階岸本瑛之助特許事務所

代理人弁理士 岸本瑛之助

大阪府大阪市中央区西心斎橋1丁目13番18号 イナバビル3階岸本瑛之助特許事務所

代理人弁理士 岸本守一

大阪府大阪市中央区西心斎橋1丁目13番18号 イナバビル3階岸本瑛之助特許事務所

代理人弁理士 渡辺彰

大阪府大阪市中央区西心斎橋1丁目13番18号 イナバビル3階岸本瑛之助特許事務所

代理人弁理士 日比紀彦

スウェーデン国 エスー221 86 ルンド ルーベン ラウジングス ゲータ

被請求人 エービー テトラ パック

東京都港区虎ノ門1丁目2番3号 虎ノ門第一ビル9階 三好内外国特許事務所

復代理人弁理士 三好秀和

東京都港区虎ノ門1丁目2番3号 虎ノ門第一ビル9階 三好内外国特許事務所

復代理人弁理士 岩崎幸邦

東京都港区虎ノ門1-2-3 三好内外国特許事務所

復代理人弁理士 伊藤正和

東京都港区虎ノ門1-2-3 虎ノ門第一ビル 三好内外国特許事務所

復代理人弁理士 小松弘子

東京都大田区東糀谷4-6-20 日本テトラパック株式会社研究開発本部知的財産権部

代理人弁理士 田中義敏

上記当事者間の特許第1795565号発明「包装材料をヒートシールする方法及び装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

訂正を認める。

本件審判の請求は、成り立たない。

審判費用は、請求人の負担とする。

理由

Ⅰ.手続きの経緯

1.本件特許第1795565号発明(以下「本件発明」という。)は、昭和57年10月8日(優先権主張1981年10月8日、スウェーデン国)に特許出願され、出願公告(特公平2-42055号)後、平成4年1月23日及び平成4年9月30日付けで手続補正がなされた後、平成5年10月28日に特許権の設定の登録がなされたものである。

2.これに対して、請求人は、平成6年3月22日付けで審判請求書を提出し、

(1)平成4年9月30日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、本件特許請求の範囲第1項記載の発明は甲第5号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、また、本件特許請求の範囲第3項記載の発明は甲第5号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである旨主張し(以下、「主張1」という。)、

(2)本件特許は特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第123条第1項第3号の規定により無効とすべきである旨主張し(以下、「主張2」という。)、

(3)平成4年9月30日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の3の規定に違反しているから、特許法第42条の規定により前記補正がなされなかった特許出願について特許がされたものとみなされるところ、平成4年1月23日付けで手続補正された特許請求の範囲第1項記載の発明は甲第5号証に記載された発明と同一であり、また、同特許請求の範囲第3項記載の発明は甲第5号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、特許法第123条第1項第1号の規定により、無効とすべきである旨主張し(以下、「主張3」という。)、証拠方法として甲第5号証[仏国特許出願公開第2027012号明細書]、甲第6号証[特公昭55-3215号公報]、甲第7号証[特開昭51-489号公報]及び甲第8号証[実願昭51-60477号(実開昭52-152067号)のマイクロフィルムを提出している。

3.被請求人は、平成7年1月26日付けで答弁書を提出するとともに、同日付けで訂正請求書を提出し、本件発明の明細書を同日付け訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めた。

4.請求人は、平成7年5月22日付けで弁駁書を提出し、

(1)本件特許発明については平成6年10月24日に専用実施権の設定登録がなされているところ、本件訂正請求は専用実施権者の承諾なしに行われたものであるから、特許法第134条第5項で準用する特許法第127条の規定に違反する旨主張し(以下、「主張4」という。)、

(2)被請求人が平成7年1月26日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲の記載は、平成4年9月30日手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載を基準にした場合、いくつかの点で、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明に該当しない部分がある旨主張し(以下、「主張5」という。)、

(3)被請求人が平成7年1月26日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲の記載は、平成4年1月23日手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載を基準にした場合、特許請求の範囲における「積層材料同志(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)と、該導電性材料層(4)の表面を覆いかつ該導電性材料層・支持層の融点より低い融点の熱可塑性材料層(3)とを有するようになっているものにおいて」なる記載、及び特許請求の範囲第3項における「積層材料(10、11)を互いにヒートシールするための装置にして、各積層材料は、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)と、該導電性材料層(4)の表面を覆いかつ該導電性材料層・支持層の融点より低い融点の熱可塑性材料層(3)とを有し、」なる記載は、特許請求の範囲の減縮に該当しない旨主張し(以下、「主張6」という。)、

(4)被請求人が平成4年9月30日付け手続補正書により補正した特許請求の範囲に基づいて、本件特許請求の範囲第1項及び第3項記載の発明は、

〈1〉甲第5号証ないし甲第8号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、

〈2〉甲第13号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し(以下、「主張7」という。)、

(5)被請求人が平成4年1月23日付け手続補正書により補正した特許請求の範囲に基づいて、

〈1〉本件特許請求の範囲第1項記載の発明は、無効審判請求書第18頁下から3行~19頁末行に述べたとおりである旨主張し、

〈2〉本件特許請求の範囲第3項記載の発明は、甲第5号証ないし甲第8号証及び甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し

〈3〉本件特許請求の範囲第3項記載の発明は、甲第13号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し(以下、「主張8」という。)、(6)被請求人が平成7年1月26日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲に基づいて、本件特許請求の範囲第1項及び第3項記載の発明は、〈1〉甲第5号証ないし甲第8号証及び甲第10号証ないし甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、

〈2〉甲第13号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、

結局、本件特許は、被請求人が平成7年1月26日付けで提出した訂正明細書による訂正によっても、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第1号の規定により、無効とすべきである旨主張(以下、「主張9」という。)するとともに、証拠方法として甲第10号証[米国特許第3673041号]、明細書甲第11号証[仏国特許出願公開第2230484号明細書]、甲第12号証[スウェーデン国特許出願公告第318993号公報]及び甲第13号証[特開昭54-72185号公報]を提出した。

5.被請求人は、平成7年12月31日付けで答弁書(第2回)を提出するとともに、同日付けで訂正請求書を再度提出し、本件発明の明細書を同日付け訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めた。

6.請求人は、平成8年4月15日付けで弁駁書(第2回)を提出し、

(1)本件特許発明については平成6年10月24日に専用実施権の設定登録がなされているところ、本件第2回訂正請求も専用実施権者の承諾なしに行われたものであるから、特許法第134条第5項で準用する特許法第127条の規定に違反する旨主張し(以下、「主張10」という。)、

(2)被請求人が平成7年12月31日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲の記載は、平成4年9月30日手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載を基準にした場合、いくつかの点で、特許請求の範囲の減縮に該当しない部分がある旨主張し(以下、「主張11」という。)、

(3)被請求人が平成7年12月31日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲の記載は、平成4年1月23日手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載を基準にした場合、特許請求の範囲第1項における「積層材料同士(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」なる記載、及び特許請求の範囲第3項における「積層材料(10、11)をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該薄層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し」なる記載は、特許請求の範囲の減縮に該当しない旨主張し(以下、「主張12」という。なお、請求人が「熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて」と引用している部分は、正しくは「熱可塑性材料の外層(3)を有し」であるので、そのように認定して記載した。)、

(4)被請求人が平成7年12月31日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲に基づいて、本件特許請求の範囲第1項及び第3項記載の発明は、

〈1〉依然として、甲第5号証ないし甲第8号証及び甲第10号証ないし甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、

〈2〉依然として、甲第13号証及び甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張し、

結局、本件特許は、被請求人が平成7年12月31日付けで提出した訂正明細書による訂正によっても、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第1号の規定により、無効とすべきである旨主張した。

(以下、「主張13」という。)

Ⅱ.訂正請求について

1.審理の対象とする訂正明細書について

まず、被請求人は平成7年1月26日付けと平成7年12月31日付けの2件の訂正請求書を提出しているが、最後に提出された訂正明細書に基づいて審理を行うのが適当であるので、本件に関しては平成7年1月26日付け訂正請求書は採用せず、平成7年12月31日付けの訂正請求書に基づいて審理を行うことにする。

2.平成4年9月30日付け手続補正書について

訂正請求が適法なものかどうかを審理するに先立ち、請求人は、平成4年9月30日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の3の規定に違反している旨主張しているので、まずこの点について検討すると、平成4年9月30日付け手続補正書は次の補正事項を含むものである。

〈1〉出願公告後の平成4年1月23日付け手続補正書の特許請求の範囲第3項における「細長いシールジョー(5)」を「シールジョー(5)」に補正、

〈2〉出願公告後の平成4年1月23日付け手続補正書の特許請求の範囲第3項における「平らな表面を有する本体(6)」を「押圧表面を有する本体(6)」に補正、

〈3〉出願公告後の平成4年1月23日付け手続補正書の特許請求の範囲第3項における「本体(6)の平らな表面に形成された溝と、該構内に嵌合され且つ前記本体(6)の平らな表面と一致するようにされた作用面(8)」を「本体(6)の押圧表面に設けられ、作用面」に補正。

そこで上記の点について検討すると、まず上記〈1〉の点に関し、補正前はシールジョーの形状が「細長い」ものに限定されていたものが、平成4年9月30日付けの手続補正により「細長い」ものに限定されず任意の形状のものを包含するようになった点で、かかる補正は実質上特許請求の範囲を拡張するものと認められる。次に、上記〈2〉の点に関し、補正前は本体表面の形状が「平らな」ものに限定されていたものが、平成4年9月30日付けの手続補正により「平らな」ものに限定されず任意の形状のものを包含すようになった点で、かかる補正は実質上特許請求の範囲を拡張するものと認められる。最後に、上記〈3〉の点に関し、補正前は、本体表面に溝が形成される点、作用面が該溝内に嵌合される点、及び作用面が本体(6)の平らな表面と一致するようにされる点、が規定されていたものが、平成4年9月30日付けの手続補正によりこれらの規定がなくなった点で、かかる補正は実質上特許請求の範囲を拡張するものと認められる。

してみると、平成4年9月30日付けの手続補正は特許法第17条の3が準用する特許法第126条第2項の規定に違反しているものと認められるので、訂正請求に先立ち、特許法第42条の規定により、平成4年9月30日付けの手続補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなす。

3.訂正の内容

被請求人が平成7年12月31日付けの訂正請求書により求めた訂正の内容は、具体的には以下のとおりである。

(なお、本件に関しては、「Ⅱ.訂正請求について 1.審理の対象とする訂正明細書について」で指摘したように平成7年1月26日付け訂正請求書は採用せず、また、「Ⅱ.訂正請求について」の「2.平成4年9月30日付け手続補正書について」で指摘したように、訂正請求に先立ち、特許法第42条の規定により、平成4年9月30日付けの手続補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなすので、本件発明の訂正の可否を判断するに際し、平成7年12月31日付けの訂正請求書により訂正請求される前の明細書は、出願公告後に平成4年1月23日付けで手続補正がなされた明細書である。)

〈1〉本件発明の明細書の特許請求の範囲において、「(1)積層材料を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、

前記方法は、

前記積層材料を中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)に沿って重ね合わせ、前記熱可塑性材料の外層(3)の表面が前記シール帯域(13、14)以内で互いに接触させるようにする段階と、

前記熱可塑性材料の外層(3)を前記シール帯域(13、14)以内で該熱可塑性材料の融点まで加熱して当該熱可塑性材料の外層(3)を溶融材料とし、同時に前記熱可塑性材料の外層(3)を互いに前記中央シール帯域(13)において圧して前記溶融材料を前記シール帯域(13、14)以内の前記積層材料の一表面から流出させて、これが前記熱可塑性材料の外層(3)の溶融していない部分によりせき止められ、これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記積層材料(4)の表面同志を密着させる段階と、

前記熱可塑性材料の外層(3)を前記溶融材料を冷却硬化させ、前記シール帯域(13、14)以内で前記積層材料間に完ペキなシール部分を形成させる段階と、

を有する積層材料を互いにヒートシールする方法。

(2)特許請求の範囲第1項に記載の方法において、前記積層材料は、前記シール帯域の両側で冷却されるようになっている方法。

(3)積層材料をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、前記熱可塑性材料の外層(3)を中央シール帯域(13)およびその両側シール帯域(14)に沿って互いに重ね合わせて該両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させ、さらに該両シール帯域(13、14)に沿って前記熱可塑性材料の外層(3)の一つに押し付けられるようになった作用面(8)を有する細長いシールジョー(5)を有するようになっている積層材料のヒートシール装置において、

前記シールジョー(5)は前記両シール帯域(13、14)に沿って対向ジョー(12)に対して前記熱可塑性材料の外層(3)を押し付けるための平らな平面を有する本体(6)と、

該本体(6)の平らな表面に形成された溝と、

該溝内に嵌合され且つ前記本体(6)の平らな表面と一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料の外層(3)を加熱するための加熱棒(7)とを含み、

前記作用面(8)には、平らな平面を有する突条(9)が設けられ、該突条(9)の平らな平面が前記シール帯域(13)以内で前記熱可塑性材料の外層(3)を互いに押し付けるようになっており、これにより、溶融材料が前記積層材料の表面より流出されるが、これが前記熱可塑性材料の外層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっていることを特徴とする積層材料のヒートシール装置。」

とあるのを、

「(1)積層材料同士(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、前記方法は、

積層材料同士(10、11)を、中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)に沿って重ね合わせ、前記熱可塑性材料層(3)の表面が前記両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させるようにする段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を含む積層材料同士(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)以内で圧して該熱可塑性材料(3)の融点まで加熱して、当該熱可塑性材料層(3)を溶融材料とし、

同時に前記熱可塑性材料層(3)を前記中央シール帯域(13)において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層(3)の溶融材料を、前記中央シール帯域(13)以内の前記導電性材料層(4)の表面から流出させ、

前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、

これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記導電性材料(4)の表面同士を密着させる段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を冷却して前記溶融材料を冷却、堆積硬化させ、前記両シール帯城(13、14)以内で前記積層材料間に完ぺきなシール部分を形成させる段階と、を有し、

前記導電性材料層(4)に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融し、さらに該積層材料同士(10、11)は、前記中央シール帯域(13)を、断面がほぼ矩形の突起(9)の先端面で圧するようになっていることを特徴とする包装用積層材料を互いにヒートシールする方法。

(2)特許請求の範囲第1項に記載の方法において、前記積層材料は、前記シール帯域の両側で冷却されるようになっている方法。

(3)積層材料(10、11)をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、

前記熱可塑性材料層(3)を、中央シール帯域(13)およびその両側シール帯域(14)に沿って互いに重ね合わせるとともに、該両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させ、

前記積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し、溶融した熱可塑性材料を冷却固化させるようにして、前記積層材料同士(10、11)をヒートシールするための装置において、

前記シールジョー(5)は、

前記熱可塑性材料層(3)を含む前記積層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)と、

該本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝と、

該溝内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱捧(7)とを含み、

前記細長いシールジョーの作用面(8)は、前記両側シール帯域(14)に沿って、前記熱可塑性材料層(3)の一つに押し付けられるようになっており、かつ、

前記作用面(8)には、該作用面から突出する断面がほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)が設けられ、

前記加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯城(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっていることを特徴とする薄層材料のヒートシール装置。」

と訂正する。

〈2〉本件発明の明細書第6頁第5~7行[本件発明の公告公報である特公平2-42055号公報(以下、「本件公報」という。)第4欄第10~12行]において、「シール帯域内の熱可塑性の層を互いに強力に押しつけ溶融熱可塑性材料を前記領域からシール帯域の隣接領域へ流出させる段階」とあるのを、「シール帯域内の熱可塑性の層を互いに強力に押しつけ溶融熱可塑性材料を前記領域の中の高圧の領域から隣接部分へ流出させる段階」と訂正する。

〈3〉本件発明の明細書第6頁第9~10行[本件公報第4欄第14~15行]において、「この方法によれば、溶融熱可塑性材料がシール帯域から隣接部分わきへ押しやられる」とあるのを、「この方法によれば、溶融熱可塑性材料がシール帯城の高圧領域から隣接部分へ押しやられる」と訂正する。

〈4〉本件発明の明細書第6頁第14~16行[本件公報第4欄第19~21行]において、「シール帯域内には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層のみが残り、これが包装積層材料の支持層と密着し、」とあるのを、「シール帯域の中の高圧の領域には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層のみが残り、これが包装積層材料の支持層に接合された導電性材料層と密着し」と訂正する。

〈5〉本件発明の明細書第8頁第15~17行[本件公報第5欄第16~18行]において、「外側のプラスチック層3の一方と支持層1との間には更にアルミニウムはくの層4がしばしば存在し、」とあるのを、「外側のプラスチック層3の一方と支持層1との間には更にアルミニウムはくの層4が存在し、」と訂正する。

〈6〉本件発明の明細書第10頁第7~11行[本件公報第6欄第4~8行]において、「アルミニウムはくまたはその他の導電性の層を含まない包装積層材料を一緒に接合すべき場合には、積層材料を加熱する領域または棒7を加熱し、また例えば電気抵抗材料でこれを構成することもできる。」とあるのを、削除する。

4.訂正の当否についての判断

(1)特許法第134条第2項の規定に関して

前記訂正事項〈1〉は、訂正前には特許請求の範囲において加熱溶融する手段が限定されていなかったのに対し、訂正により導電性材料層に高周波を印加する主旨の限定を加えることをその骨子とするものであるので、これは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

(なお、この点に関し、請求人は、特許請求の範囲第1項に関し、「各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」を「各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、」とする補正は訂正により不明りょうな記載となっただけで、減縮にあたらない旨主張し、それと同じ理由で特許請求の範囲第3項における「各積層材料は、その一表面を覆い、かつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、」を「各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該薄層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、」とする補正は訂正により不明りょうな記載となっただけで、減縮にあたらない旨主張し、それらの主張の根拠として、次の点を指摘している。

『「熱可塑性材料の外層(3)」は、これの前に記載されている「熱可塑性材料層(3)」と別個のもののように記載されている。なぜなら、「熱可塑性材料の外層(3)」の前に「その(「積層材料」を指す)一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の」という修飾語がついているからである。融点の高低の比較の対象物が「積層材料」である以上、「積層材料」と「熱可塑性材料の外層(3)」とは異なるものでなければならない。ところが、「積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し」ているのである。このような「積層材料」の融点はどのようにしてもとめるのであろうか。』

しかしながら、先に指摘したように、今回の訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと認められるし、しかも、「熱可塑性材料の外層(3)」と「熱可塑性材料層(3)」とは、共に同一の番号「(3)」が付されていることからみて、両者は同一のものをやや異なる表現で単に言い代えたものにすぎないことは明らかというべきであるので、請求人が指摘する点が不明りょうであるとも認められない。)

前記訂正事項〈2〉及び〈3〉は、溶融熱可塑性材料をどこからどこへ流出させるのかを明瞭にするものであるので、これは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

前記訂正事項〈4〉における、「シール帯域内には」を「シール帯域内の高圧の領域には」と訂正する点は、シール帯域の領域を明確化するものであるので、これは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、「包装積層材料の支持層と密着し、」とあるのを、「包装積層材料の支持層に接合された導電性材料層と密着し」と訂正する点は、熱可塑性材料層は、「包装積層材料の支持層」ではなく「包装積層材料の支持層に接合された導電性材料層」と密着することは、例えば図面のFig.3及びそれに関する明細書の記載から明らかであるので、誤記の訂正を目的とするものと認められる。

前記訂正事項〈5〉は、今回の訂正請求により特許請求の範囲において、訂正前には加熱溶融する手段が限定されていなかったのに対し、訂正により導電性材料層に高周波を印加する主旨の限定を加えることを骨子とする訂正が加えられたことに伴い、実施例において導電性材料層(アルミニウムはくの層4)の存在を必須とすることを明らかにするものであるので、これは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

前記訂正事項〈6〉は、今回の訂正請求により特許請求の範囲において、訂正前には加熱溶融する手段が限定されていなかったのに対し、訂正により導電性材料層に高周波を印加する主旨の限定を加えることを骨子とする訂正が加えられたことに伴い、導電性材料層に高周波を印加する以外の構成をとり得る旨の記載部分を削除するものであるので、これは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内における、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

したがって、訂正事項〈1〉~〈6〉は、いずれも、特許法第134条第2項の規定に適合する。

(2)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第2項の規定に関して

訂正事項〈1〉~〈6〉は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

したがって、訂正事項〈1〉~〈6〉は、いずれも、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第2項の規定に適合する。

(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して

〈1〉訂正後の発明の要旨

訂正後の発明の要旨は、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。

「(1)積層材料同士(10、11)を互いにヒートシールする方法にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、前記方法は、

積層材料同士(10、11)を、中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)に沿って重ね合わせ、前記熱可塑性材料層(3)の表面が前記両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させるようにする段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を含む積層材料同士(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)以内で圧して該熱可塑性材料(3)の融点まで加熱して、当該熱可塑性材料層(3)を溶融材料とし、

同時に前記熱可塑性材料層(3)を前記中央シール帯域(13)において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層(3)の溶融材料を、前記中央シール帯域(13)以内の前記導電性材料層(4)の表面から流出させ、

前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、

これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記導電性材料(4)の表面同士を密着させる段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を冷却して前記溶融材料を冷却、堆積硬化させ、前記両シール帯城(13、14)以内で前記積層材料間に完ぺきなシール部分を形成させる段階と、を有し、

前記導電性材料層(4)に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融し、さらに該積層材料同士(10、11)は、前記中央シール帯域(13)を、断面がほぼ矩形の突起(9)の先端面で圧するようになっていることを特徴とする包装用積層材料を互いにヒートシールする方法。(以下、本件第1発明という。)(2)特許請求の範囲第1項に記載の方法において、前記積層材料は、前記シール帯域の両側で冷却されるようになっている方法。

(3)積層材料(10、11)をヒートシールするための装置にして、各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、

前記熱可塑性材料層(3)を、中央シール帯域(13)およびその両側シール帯域(14)に沿って互いに重ね合わせるとともに、該両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させ、

前記積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し、溶融した熱可塑性材料を冷却固化させるようにして、前記積層材料同士(10、11)をヒートシールするための装置において、

前記シールジョー(5)は、

前記熱可塑性材料層(3)を含む前記積層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)と、

該本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝と、

該溝内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(3)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱捧(7)とを含み、

前記細長いシールジョーの作用面(8)は、前記両側シール帯域(14)に沿って、前記熱可塑性材料層(3)の一つに押し付けられるようになっており、かつ、

前記作用面(8)には、該作用面から突出する断面がほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)が設けられ、

前記加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯城(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっていることを特徴とする薄層材料のヒートシール装置。(以下、本件第2発明という。)」

〈2〉甲各号証の記載事項

甲第5号証には、「本発明は、熱融着可能な材料よりなる接着層と、ある程度の機械強さを有しかつ軟化点がその熱融着可能な材料よりも高い材料よりなる外層とを備えた形式の層状形成材料の融着方法、およびこの方法により熱融着された層状形成材料に関する。本発明はまた、充填後に閉じ、この方法により融着した層状形成材料よりなる容器にも関する。

本発明の目的は、つぎのとおりである。

-完全な安全性を与え、かつ例えば食料品の粒子によって被融着面が汚されても菌に対して確実に気密な熱融着が可能なように所定形式の層状形成材料を融着する方法。

-食料品用容器であって所定形式の層状形成材料でつくったものに完全な安全性を与えるように、かつこれを菌が透過しないように閉塞することができるようにしうる方法。

本発明によれば、これらの目的ならびに他の目的を達成するのには、特殊外形の融着ジョーを用いて層状形成材料の各熱融着可能な層を相互に押しつけ、これによって分離線から出発し、その両側に広がる漸進的な熱融着の動きによる融着の故に、各接触層を強制的に横に分離する。こうして別々の2つの融着が行われ、それぞれ互いに押しあっている熱融着可能な層の表面にたまたま存在する汚れ粒子を包みこむ。さらに、別々の2つの熱融着部が得られるので、これらの融着部のうちの1つに現われるかも知れない亀裂が他の融着部へ広がる傾向がない。

本発明の好ましい実施例によれば、層状に形成された材料には、薄い金属箔よりなる外層と、熱可塑性材料よりなる接触層が含まれている。層状に形成された材料を食料品の包装に使用する場合は、ポリプロピレン被覆の薄いアルミニウム箔によって優れた結果が得られる。

本発明の別の特徴によれば、この方法の実施には、常時加熱した融着ジョーを使用する。公知のように、常時加熱した融着ジョーを使用すれば融着操作を加速することができる。常時加熱した融着ジョーによって行なった熱融着は硬化温度までは冷却されないけれども、本発明の方法によって、空気を含む容器に蓋を熱融着する場合、容器内に大気圧以上のある圧力が、加熱された空気によって生じても、ジョーを上げた場合、融着部が曲がるようなことにはならないと思われる。

本発明の方法による実施のため、少なくとも1つが特殊外形を有し、すなわち融着面上に突起領域を呈する融着ジョーを用いるのが好ましい。このジョーの作用面すなわち融着面は外形がV状であり、対向ジョーが平らな融着面を呈し、かつVの各脚がそれぞれ、その平らな面に対し小さな角度をなしていることが好ましい。

前記のVが、対向ジョーの平らな融着面に対して対称である場合には、有利な結果が得られる。融着する材料の厚さと種類次第で、この角度が5~15°の間にある場合、きわめて良好な結果が得られる。V形のジョーの作用面と対向ジョーの平らな作用面の間に形成される角度が8°である場合、これらのジョーによって優れた結果が得られる。」(第1頁第1行~第2頁第28行参照)こと、及び

「第1図に示す容器は、蓋(2)によって閉じられた筒と類似の本体(1)からなっている。

本体(1)の上縁にはフランジ(3)があり、これに蓋(2)の対応フランジ(4)が熱融着される。容器本体(1)はある程度の機械強さをもつ材料の外層(5)と、熱融着可能な接触層(6)よりなる層状体でできている。蓋(2)の材料は、これと類似の構造をしており、ある程度の機械強さをもつ外層(7)と、熱融着可能な接触層(8)とからなる。各溶融ジョーは平らな作用融着面(10)を有する下部ジョー(9)と、2つの融着面すなわち作用面(12)と(13)からなる特殊外形の上部ジョー(11)とからなるが、後者は、断面がV形を呈し、かつそれぞれ平らな作用面(10)と角度αおよびβを画定している。図示の実施例において、角度αおよびβは8度である。

蓋(2)を容器本体(1)上に置き、かつ充填容器を、そのフランジが加熱ジョー(9)と(11)の間にくるように配置すると、上部ジョー(11)を層状形成材料(5)(6)および(7)(8)を圧縮する位置まで下げる。層(5)と(7)で伝達される熱により、ジョー(9)と(11)の間に含まれる中央領域において、層(6)と(8)の融着可能材料は溶け、この領域は、圧縮を続けている間徐々に広がる。この圧縮は、層(6)と(8)の溶けた材料が毛細管現象で縮み、中央層(第2図)を去って横方向に分かれ、この領域の両側で熱融着部(14)と(15)を形成するまで続けられる。層(6)と(8)の間にたまたま存在する汚れ粒子(16)は、その縮み移動の際に、溶けた材料の中に完全に埋没してしまう。第2図に示し、かつ層(5)と(7)および熱融着部(16)によって画定された2つの空洞(17)は、それぞれ層(5)と(6)および(8)と(7)にきわめて薄い皮膜として以前に存在しかつこれらの層を相互に接着せしめるために使用された、変形された成層材によって埋められたことが分るだろう。第2図において、図示されているように、層(5)と(7)が、分離線に沿って、たとえ接触していても、これらの層の間には真の接触は存在しないのである、割に高い圧力のもとでも、或る量の成層材は分離線上に残存している。

その結果、融着ジョーが相互に離間すると、蓋(2)は容器本体(1)に熱融着され、菌に対し気密となる。トマトソースをかけた魚のような食料品の、本体も蓋もアルミニウム箔で覆われたポリプロピレン製の筒に類似した容器による包装において、優れた結果が得られた。この場合、アルミニウム箔の厚さは50ミクロンであり、ポリプロピレンの層も厚さが50ミクロンである。

上部のジョーの作用面(12)と(13)及び下部ジョーの作用面(10)との間にそれぞれ形成される角度αおよびβは8°である。各ジョー間の平均圧力は、融着領域については23kgf/cm2であり、この圧力は1.5秒間維持される。上部ジョーの温度は225℃であり、下部ジョーの温度は200℃である。容器のフランジが包装される食料品によって汚されている場合でも、なお、確実で、菌に完全に気密な熱融着を行うことができる。」(第2頁第39行~第4頁21行参照)こと、

が記載され、また、Fig.1及び2には同号証における融着方法が図示されている。

甲第6号証には、「第1図に示された包装材料6は、紙又はカートン等よりなる基礎層10、ポリエチレン又はポリプロピレン等の熱可塑性材料より成る内側シール層2、好ましくはアルミニウム・フオイルより成る金属フオイル層1・・・(中略)・・・によつて構成されている。

・・・(中略)・・・

一方の加圧ユニツト4は、図示していない高周波発生装置に接続できるコイル3を装備している。

・・・(中略)・・・

シール作業は加圧要素としての加圧ユニツト4、5を互いに圧接させることによつて実施される。前記操作によつて、両加圧ユニツト間に配置されているチユーブは扁平にされ、熱可塑性シール層2は互いに対向させられ、相互に圧せられることになる。そして両加圧ユニツト4、5が独自の加圧位置に達すると、0.5MHzと2MHzの間の高周波交流好ましくは約1.5MHzの高周波電流が、図示していない高周波発生装置から前記動作コイルを経て導入され、金属フオイル層1を通過する高周波電界がコイル3によって発生する。

・・・(中略)・・・

金属フオイル層1内に発生した熱は、隣接の熱可塑性材料層2に伝えられ、これらの層2は溶融して均質に接着する。前記の接着部は、交流磁界、を断つた後、冷却され機械的耐久性あるシール部7を形成する。

・・・(中略)・・・

以上に説明した本装置は、要約して述べれば、積層体中のある層を、同一積層体中の隣接層内に熱を発生させることにより間接的に加熱するものである。本例でいえば、シール温度にまで加熱されるのは熱可塑性シール層であり、シール層のこのような加熱は、金属フオイル層内に渦流損を生じさせる高周波電磁界によつて隣接の金属フオイル層が加熱されることにより行われる。金属フオイル層内に発生した渦電流は金属フオイル材料を急速に加熱するが、隣接の可塑性層は高周波電磁界の直接的影響によつては殆ど影響を受けない。加熱された金属フオイル層が可塑性シール層に隣接して配置されているという事実によつて前記シール層は金属フオイル層からの熱伝導によつて加熱され、結果としてシール温度にまで間接的に加熱されるのである。」(第3欄第19行~第5欄第29行参照)ことが記載され、また、第1図及び第2図には同号証におけるシール装置及びその使用例が図示されている。

甲第7号証には、「脆弱切目にて連続する包装用連続袋を一袋寸法づゝ送り出す移送装置と、この停止時に風を送り連続袋の中の一袋を膨らませて、この中に被包装物を投入する案内装置と、この下側には袋の口縁を熱溶着して閉じる一対の接離する溶着顎よりなるシール装置とよりなる包装々置において、一対の溶着顎のうち、外側顎を内側顎に対して接離するよう装備してあり、両顎が相接触後、一対の溶着顎は挟持状態のまゝ若干内側に(扁平袋の面に直角方向)移動し復帰するように装備してあり、一対の溶着顎の直ぐ上部の不動部には該一対の溶着顎が内方に移動したとき、該連続袋の脆弱切目部分が当る位置に切刃が設けてあることを特徴とする包装装置。」(特許請求の範囲)に関する発明が記載されており、また、「この発明は熱可塑性のフイルムよりなる脆弱部で順次連続した袋を間歇的に移送し、その各々の袋部分の開口部より風を吹き込み膨らみせ、この中に被充填物を装入後開口部を封緘し、後個々の袋に分離する装置に係るものである。」(第1頁左下欄最下行~右下欄第4行参照)こと、及び「21は、包装装置の前面に平行にかつ水平に設けたヒートシーラであつて溶着顎の一方の内側顎であり、・・・(中略)・・・

29は前記ヒートシーラ21と接離する外側顎たる受板であつて・・・(中略)・・・

先づ袋部11の口縁をヒートシーラ21と受板29とによつて挟持し、シールする。」(第2頁右上欄第8行~第3頁左上欄第4行参照)こと、また、第6図には突起のほぼ矩形の先端面で圧するようになっているヒートシーラ21と受板29が図示されている。

甲第8号証には、「この考案は、ヒートシーラの熱板、特に包装容器のヒートシールに用いる熱板の構造に関するものである。

無延伸ポリプロピレンフイルムとアルミニウム箔から成る容器に、延伸ポリプロピレンフイルムとアルミニウム箔から成る蓋を熱融着した密封容器は、容易に開封できる特徴を有することは、公知に属する。」(第1頁第11~18行参照)こと、「前記下型2の印圧面4は、水平になつているが、上型1の印圧面3は、その外周縁方向に、印圧面4に対して間隙が大きくなるように傾斜させてある。この傾斜は、勾配1/2程度以下が好ましく、あまり傾斜をきつくすると、蓋及び容器のフランジ部を切断するおそれがある。また、この傾斜は、必ずしも直線状でなくてもよく、曲線状或いは階段状にすることができる。」(第3頁第11~18行参照)こと、「この考案の熱板によれば、以上のように、開封が容易で開封後の外観も優れた容器が得られる」(第5頁第16~17行参照)ことが記載されている。

甲第10号証には、「開いた袋の対向する熱可塑性表面は、シールする表面が液体や脂肪質で汚れがちであるが、その表面をヒートシールする方法であって、横方向に丸みをもつ加熱されたシールバーを、弾力性のある台座に支持された袋の対向するシートに押し付けて、シートが互いに融着する前にシール部分から汚染物質を押し出し、固形微粒子の汚染物質がシールする部分にある場合にはスチームを吹き付けて、シール前にシールする表面をきれいにすることにより達成される。」(第1欄第11~22行参照)こと、「第2図はヒーター・ブロック(21)から下がっているジョー(20)を備えた普通のヒートシール装置を図示しているが、そのジョーは平たい作用面(20’)をもち、固い台座(23)が前記ジョーと離れた位置にある。ジョーの作用面は、台座の作用面と平行している。シール部分に液状(25)の汚染物質が付着した熱可塑性材料の二枚の対向するシート(24)が、台座(23)上に置かれている。そして、第3図において加熱されたジョー(20)が、シートをシールするのに十分な圧力と十分な時間をもってシート(24)に降ろされる。」(第2欄第65行~第3欄第3行参照)ことが記載され、また、第2図及び第3図には、突起のほぼ矩形の先端面で圧するようになっているシール装置及びその使用例が図示されている。

甲第11号証には、「本発明は、熱融着可能なフィルム、例えばポリエチレン製フィルムの融着方法と、この方法を実施するための装置に関するものである。」(第1頁第1~4行参照)こと、「ポリエチレン製の2枚のフィルム(7)と(8)の融着を実施するために、これらのフィルムを2つのジョー(A)と(B)の間に挿入し、そして、まず第一に2つのジョーを互いに近づける。加熱素子(2)は融着すべき中央部分(9)に圧力を加え、しかも、ポリエチレンを融点まで加熱し、一方、脇締具(3)と(4)は、融着すべき部分の縁(10)と(11)に圧力を加え、しかもこれらを冷却する。

溶融したポリエチレンは脇締具(3)と(4)の方向へ、2つの加熱素子(2)によって追い出される。このプラスチック材の移動は脇締具によって停止され、したがって、融着縁に厚い補強部(12)が形成される。」(第3頁第40行~第4頁第13行参照)こと、及び「最後に、2つのジョー(A)と(B)は完全に開き、脇締具(3)と(4)は離間する。融着中央部はこの時点ではまだ熱く、プラスチック材は収縮し、したがって、厚くなってきて、融着の丈夫さの改善に寄与することになる。」(第4頁第19~24行参照)ことが記載され、また、Fig.2には同号証におけるシール装置の使用の態様が図示されている。

甲第12号証には、「本発明は、ヒートシールによって少なくともその一側がヒートシール可能な材料、例えば熱可塑性材料でできているシート材料層同士を結合する方法及び装置に関するものである。」(第1頁第1~4行参照)こと、「図面は熱可塑性層(1)でコーティングされかつシール帯域内でヒートシールによって結合される2枚のシート(2)を示す。熱可塑性層が互いに向かい合うように2つのシールジョー(3)によって2枚のシート(2)同士が圧され、そのシールジョーの表面の一部がヒート・エレメントによって加熱される。ジョーの対向する表面はその加熱部において一対の対向する溝(5)に向かって広がっている。ジョーの対向する表面同士の間隔は、ヒート・エレメント(4)に対して溝(5)の反対側の方がヒート・エレメント(4)に隣接する側の方より狭い。チャンネル(6)は溝(5)の近くに並行して設けられ、溝(5)及び溝(5)に隣接するジョーの部分を冷却するためにジョーに冷媒を通すようにできている。エレメント(4)は連続して加熱され、ジョー(3)がシート(2)に圧せられるとき、熱可塑性材料(1)がジョー(3)によって加熱されたシール帯域の部分内で溶融する。シール帯域の加熱部内でジョー(3)の対向する表面は溝(5)に向かって広がっているので、溶融された熱可塑性材料(1)はジョー(3)が冷却されそれ自体が早く固体化する溝(5)に向かって押し出される。ジョー(3)が離れるとき、ジョイント全体にのびかつ熱可塑性材料によってできているすでに固体化した塊(7)が形成された部分が存在し、その部分はシート同士を確実に結合させる。」(第2頁第20行~第3頁第3行参照)ことが記載され、また、添付された図面には同号証におけるシール装置及びその使用の態様が図示されている。

甲第13号証には、「本発明は支持層および少なくとも一つの外側の熱可塑性材料の層を含む包装材を熱シールするものであつて、ついになつて共働するシールジヨーによつて一緒におかれた二つの材料の層をある時間圧縮し、同時に少なくとも前記シールジヨーの一つから圧縮された区域に熱を伝達する熱シールの方法および装置に関する。」(第2頁右上欄第2~8行参照)こと、「シールジヨー13は長くて幅狭の形のものであり、そして平らにされた包装材のチユーブの幅を超える長さを有する。シールジヨー13はその作用面が包装材のチユーブに面するように装置7のリツプ12に取付けられている。作用面14には二つの平行な長手方向の加熱区域15を備え、それらの加熱区域はその全長に沿つて非伝導材で作られた平行な帯状の電気抵抗材から成つている。加熱区域15または帯は接続線(図示せず)を介して電源に接続され、適当な作動温度に加熱され得る。その長手方向に見て、シールジヨーの中央には、作用面に二つの流体排出孔16が備えられ、それらの排出孔はシールジヨー13の内部にある管17(第4図)および他の管やライン(図示せず)を介して圧力流体源に接続することができる。シールジヨー13はさらにリツプ12にこのシールジヨーを取付けるための要素(図示せず)および二つの長手方向の内部冷却管18を含む。」(第4頁右上欄第7行~左下欄第5行参照)ことが記載され、また、第1~4図には同号証におけるシール方法及びその装置における使用の態様が図示されている。

〈3〉対比・判断

訂正後の発明と前記甲各号証に記載された発明とを対比する。

訂正後の発明は、本件第1発明に関し、「各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ、各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有するようになっているものにおいて、前記方法は、

積層材料同士(10、11)を、中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)に沿って重ね合わせ、前記熱可塑性材料層(3)の表面が前記両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させるようにする段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を含む積層材料同士(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)以内で圧して該熱可塑性材料(3)の融点まで加熱して、当該熱可塑性材料層(3)を溶融材料とし、

同時に前記熱可塑性材料層(3)を前記中央シール帯域(13)において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層(3)の溶融材料を、前記中央シール帯域(13)以内の前記導電性材料層(4)の表面から流出させ、

前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、

これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させるとともに前記中央シール帯域(13)内の前記導電性材料(4)の表面同士を密着させる段階と、

前記熱可塑性材料層(3)を冷却して前記溶融材料を冷却、堆積硬化させ、前記両シール帯城(13、14)以内で前記積層材料間に完ぺきなシール部分を形成させる段階と、を有し、

前記導電性材料層(4)に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融し、さらに該積層材料同士(10、11)は、前記中央シール帯域(13)を、断面がほぼ矩形の突起(9)の先端面で圧するようになっている」点、及び本件第2発明に関し、「各積層材料は、熱可塑性材料層(3)と、導電性材料層(4)と、繊維質材料の支持層(1)とを有し、かつ各積層材料は、その一表面を覆いかつ該積層材料の融点より低い融点の熱可塑性材料の外層(3)を有し、

前記熱可塑性材料層(3)を、中央シール帯域(13)およびその両側シール帯域(14)に沿って互いに重ね合わせるとともに、該両シール帯域(13、14)以内で互いに接触させ、

前記積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し、溶融した熱可塑性材料を冷却固化させるようにして、前記積層材料同士(10、11)をヒートシールするための装置において、

前記シールジョー(5)は、

前記熱可塑性材料層(3)を含む前記積層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)と、

該本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝と、

該溝内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱捧(7)とを含み、

前記細長いシールジョーの作用面(8)は、前記両側シール帯域(14)に沿って、前記熱可塑性材料層(3)の一つに押し付けられるようになっており、かつ、

前記作用面(8)には、該作用面から突出する断面がほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)が設けられ、

前記加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯城(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっている」点を必須の構成要件としている。

しかしながら、前記甲各号証には、上記の点については記載も示唆もなされていない。

すなわち、甲第5号証に関し、甲第5号証に記載されたものは加熱ジョーからの単なる熱伝導により熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明におけるものは高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるので、そもそも両者は加熱方式を異にするものであるし、更に、甲第5号証に記載されたものは、ジョー(9)と(11)により押圧された結果、溶けた熱可塑性材料が毛細管現象で縮み、また、層(5)と(7)および熱融着部(16)によって画定された2つの空洞(17)を形成する、のに対し、本件第1及び第2発明におけるものは、突起で押圧することにより流出し、また、シール帯域の中の高圧の領域には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層が残るものであるので、両者は、熱可塑性材料の流出形式、及び、シール帯域の中の高圧の領域に熱可塑性の層が残るか否か、の点でシールの内容を異にするものである。

しかも甲第5号証に記載されたものは、前述の本件第1発明における必須の構成要件のうち、

「繊維質材料の支持層(1)」、「中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)」、

「シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させる」、「導電性材料層(4)に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融し」、「積層材料同士(10、11)は、前記中央シール帯域(13)を、断面がほぼ矩形の突起(9)の先端面で圧する」を欠き、また、前述の本件第2発明における必須の構成要件のうち、「繊維質材料の支持層(1)」、「積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し」、「(シールジョー(5)は、)熱可塑性材料層(3)を含む前記債層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)(を有する)」、「(シールジョー(5)は、)本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝(を有する)」、「(シールジョー(5)は、)該構内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱捧(7)とを含み」、「作用面(8)には、該作用面から突出する断面がほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)が設けられ」、「加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯城(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており」、「熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっている」を欠くものである。

また、甲第6号証に関し、甲第6号証に記載されたものは、高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)する点においては本件第1及び第2発明におけるものと同じであるが、本件第1及び第2発明におけるものが、双方の熱可塑性層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分を形成して強みと優れた密封性を達成するのに対し、甲第6号証に記載されたものはかかるたい積部分を形成するものとは認められない点で、両者はシールの内容を異にするものである。

しかも甲第6号証に記載されたものは、前述の本件第1発明における必須の構成要件のうち、

「中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)」、「熱可塑性材料層(3)を前記中央シール帯域(13)において互いにさらに強く圧して、前記熱可塑性材料層(3)の溶融材料を、前記中央シール帯域(13)以内の前記導電性材料層(4)の表面から流出させ」、「シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させる」、「積層材料同士(10、11)は、前記中央シール帯域(13)を、断面がほぼ矩形の突起(9)の先端面で圧する」を欠き、また、前述の本件第2発明における必須の構成要件のうち、「積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し」、「(シールジョー(5)は、)熱可塑性材料層(3)を含む前記債層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)(を有する)」、「(シールジョー(5)は、)本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝(を有する)」、

「(シールジョー(5)は、)該構内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱捧(7)とを含み」、「作用面(8)には、該作用面から突出する断面がほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)が設けられ」、「加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯城(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており」、「熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっている」を欠くものである。

次に、甲第7号課に関し、甲第7号証に記載されたものはヒートシーラからの単なる熱伝導により熱可塑性のフイルムを加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明におけるものは高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるので、そもそも両者は加熱方式を異にするものであるし、更に、本件第1及び第2発明におけるものが、前述の必須の構成要件を採用することにより、双方の熱可塑性層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分を形成して強みと優れた密封性を達成するのに対し、甲第7号証に記載されたものはかかるたい積部分を形成するものとは認められない点で、両者はシールの内容を異にするものである。しかも、甲第7号証に記載されたものは、前述の本件第1及び第2発明における必須の構成要件を明らかに欠くものである。

次に、甲第8号証に関し、甲第8号証に記載されたものは開封が容易で開封後の外観も優れた容器が得られるのに対し、本件第1及び第2発明は強みと優れた密封性が得られる点、及び甲第8号証に記載されたものはヒートシーラ熱板からの単なる熱伝導により熱可塑性のフイルムを加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明は高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融する点、において、甲第8号証に記載されたものと本件第1及び第2発明とは、そもそも技術的課題及び加熱方式を異にするものである。しかも、請求人は甲第8号証を「断面がほぼ矩形の突起」の例証として示すものであるが、請求人が引用する、甲第8号証における「(この傾斜は)階段状にすることができる。」なる記載が「断面がほぼ矩形の突起」の例証となるとも認められない。更に、甲第8号証に記載されたものは、前述の本件第1及び第2発明における必須の構成要件を明らかに欠くものである。

次に、甲第10号証に関し、甲第10号証に記載されたものは加熱されたジョーからの単なる熱伝導により熱可塑性シートを加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明におけるものは高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるので、そもそも両者は加熱方式を異にするものであるし、更に、本件第1及び第2発明におけるものが、前述の必須の構成要件を採用することにより、双方の熱可塑性層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分を形成して強みと優れた密封性を達成するのに対し、甲第10号証に記載されたものはかかるたい積部分を形成するものとは認められない点で、両者はシールの内容を異にするものである。しかも、甲第10号証に記載されたものは、前述の本件第1及び第2発明における必須の構成要件を明らかに欠くものである。

次に、甲第11号証に関し、甲第11号証に記載されたものは加熱素子からの単なる熱伝導によりポリエチレン製のフイルムを加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明におけるものは高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるので、そもそも両者は加熱方式を異にするものであるし、更に、本件第1及び第2発明におけるものが、前述の必須の構成要件を採用することにより、中央シール帯域(13)、その両側シール帯域(14)及び両シール帯域(13、14)の外側の層の共働作用により、双方の熱可塑性層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分を形成して強みと優れた密封性を達成するのに対し、甲第11号証に記載されたものはかかるたい積部分を形成するものとは認められない点で、両者はシールの内容を異にするものである。しかも、甲第11号証に記載されたものは、前述の本件第1及び第2発明における必須の構成要件を明らかに欠くものである。

次に、甲第12号証に関し、甲第12号証に記載されたものはヒート・エレメントからの単なる熱伝導により熱可塑性材料でできているシート材料層を加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明におけるものは高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるので、そもそも両者は加熱方式を異にするものであるし、更に、本件第1及び第2発明におけるものが、前述の必須の構成要件を採用することにより、中央シール帯域(13)、その両側シール帯域(14)及び両シール帯域(13、14)の外側の層の共働作用により、双方の熱可塑性層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分を形成して強みと優れた密封性を達成するのに対し、甲第12号証に記載されたものはかかるたい積部分を形成するものとは認められない点で、両者はシールの内容を異にするものである。しかも、甲第12号証に記載されたものは、前述の本件第1及び第2発明における必須の構成要件を明らかに欠くものである。

最後に、甲第13号証に関し、甲第13号証に記載されたものはシールジョーからの単なる熱伝導により熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるのに対し、本件第1及び第2発明におけるものは高周波を印加することにより導電性材料層を加熱(注.高周波加熱)し、もって隣接する熱可塑性材料層を加熱溶融するものであるので、そもそも両者は加熱方式を異にするものであるし、更に、本件第1及び第2発明におけるものが、前述の必須の構成要件を採用することにより、双方の熱可塑性層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分を形成して強みと優れた密封性を達成するのに対し、甲第13号証に記載されたものはかかるたい積部分を形成するものとは認められない点で、両者はシールの内容を異にするものである。

しかも甲第13号証に記載されたものは、前述の本件第1発明における必須の構成要件のうち、「中央シール帯域(13)とその両側シール帯域(14)」、「シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない材料を相互に押圧し、この押圧された材料により前記流出した溶融材料が、せき止められるようになし、これにより前記両側シール帯域(14)の端部に前記溶融材料の堆積(15)を形成させる」、「導電性材料層(4)に高周波を印加することにより前記熱可塑性材料(3、3)を加熱溶融し」、を欠き、また、前述の本件第2発明における必須の構成要件のうち、「積層材料同士(10、11)を両シール帯域(13、14)内で細長いシールジョー(5)と対向ジョー(12)との間で圧して加熱し」、「(シールジョー(5)は、)熱可塑性材料層(3)を含む前記債層材料(10、11)を、前記両シール帯域(13、14)に沿って、前記対向ジョー(12)に対して押し付けるための平らな押圧表面を有する本体(6)(を有する)」、「(シールジョー(5)は、)本体(6)の平らな押圧表面に形成された溝(を有する)」、「(シールジョー(5)は、)該構内に嵌合され、且つ前記本体(6)の平らな押圧表面に一致するようにされた作用面(8)を有し、前記熱可塑性材料を溶融材料にするように前記熱可塑性材料層(3)を加熱するための導電性加熱捧(7)とを含み」、「加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯城(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており」、「熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっている」を欠くものである。

また、前述のように、甲第6号証に記載された技術とその他の前記各甲号証に記載された技術とは加熱方式を異にするものであるから、これらの技術を組み合わせることが当業者にとって容易になし得たものということはできず、しかも、前記各甲号証には本件第1及び第2発明の構成の一部分が断片的に記載されていることは認められるにしても、それらを組み合わせて本件第1及び第2発明の構成を採用すべき技術的必然性を見出すことができない。

そして、本件第1及び第2発明は、前記の必須の構成要件を採用することにより、強みと優れた密封性をもつ、前記各甲号証に記載されたものからは予想することができない訂正明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。

したがって、訂正後の本件第1及び第2発明は、前記各甲号証に記載された発明であるとすることはできず、また、前記各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできないので、訂正後の本件第1及び第2発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものと認められる。

5.訂正の当否についての結論

したがって、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は、特許法特許法第134条第2項の規定、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものであるので、適法なものとしてこれを認める。

Ⅲ.本件発明についての判断

1.本件発明の要旨

本件発明の要旨は、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。

(本件発明の要旨については、「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して〈1〉訂正後の発明の要旨」の項参照。)

2.甲第各号証の記載事項

甲第各号証の記載事項については、前記のとおりである。

(甲第各号証の記載事項については、「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して」の「〈2〉甲第各号証の記載事項」の項参照。)

3.請求人の主張についての検討

以下、請求人が主張する、主張1~13について検討する。

〈1〉主張1について

前述のように、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は適法なものである(「Ⅱ.訂正請求について」の「5、訂正の当否についての結論」参照。)ので、本件発明は平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書に記載された発明であることから、本件発明と各甲号証に記載された発明との対比・判断の内容は、訂正後の本件第1及び第2発明と各甲号証に記載された発明とを対比・判断したところの、前記「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して〈3〉対比・判断」の項に記載したとおりのものとなる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

〈2〉主張2について

1)請求人は、必須要件項1及び2においては積層材料には「導電性材料層(4)」を含むことが必須であるところ、発明の詳細な説明には「外側のプラスチック層3の一方と支持層1との間には更にアルミニウムはくの層4がしばしば存在し、」(本件公報第5欄第16~18行)、「アルミニウムはくまたはその他の導電性の層を含まない包装積層材料を一緒に接合すべき場合には、積層材料を加熱する領域または棒7を加熱し、また例えば電気抵抗材料でこれを構成することもできる。」(本件公報第6欄第4~8行)と記載されており、「導電性材料層(4)」が発明の構成に欠くことができない事項でないように述べられている旨主張している。

しかしながら、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書では、請求人が指摘する発明の詳細な説明における記載部分の内、前者は「外側のプラスチック層3の一方と支持層1との間には更にアルミニウムはくの層4が存在し、」と訂正され、また、後者の記載部分は削除されたので、請求人が指摘する不備はないものとなった。

2)請求人は、必須要件項1には「これら材料同士(10)(11)をシール帯域(13)(14)内で圧して加熱し、しかしてシール帯域(13)(14)の中央部分(13)をさらに強く圧するようにして、加熱溶融した前記熱可塑性層(3)の材料を前記導電性材料層(4)の表面から流出させ」とあり、必須要件項2には「突条(9)のほぼ矩形の平らな平面で前記シール帯域(13)(14)を押しつけ、これにより、前記熱可塑性層(3)は、前記シール帯域(13)(14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出される」とあるところ、発明の詳細な説明には「・・・シール帯域内の熱可塑性の層を互いに強力に押しつけ溶融熱可塑性材料を前記領域からシール帯域の隣接領域へ流出させ」(本件公報第4欄第6~12行)、「シール帯域内には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層のみが残り」(本件公報第4欄第19~21行)とそれぞれ記載されており、先の特許請求の範囲の記載と矛盾する旨主張している。

しかしながら、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書では、請求人が指摘する発明の詳細な説明における記載部分の内、前者は「シール帯域内の熱可塑性の層を互いに強力に押しつけ溶融熱可塑性材料を前記領域の中の高圧の領域から隣接部分へ流出させ」と、また後者は「シール帯域の中の高圧の領域には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層のみが残り」と訂正されたので、請求人が指摘する不備はないものとなった。

3)請求人は、必須要件項1及び2には「前記導電性材料層(4)に高周波を印加する」、及び「加熱棒(7)に高周波電力を印加しつつ」とあるところ、発明の詳細な説明には「アルミニウムはくまたはその他の導電性の層を含まない包装積層材料を一緒に接合すべき場合には、積層材料を加熱する領域または棒7を加熱し、また例えば電気抵抗材料でこれを構成することもできる。」(本件公報第6欄第4~8行)と記載されており、本件第1及び第2発明の特許請求の範囲における記載と相容れない旨主張している。

しかしながら、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書では、請求人が指摘する発明の詳細な説明における記載部分は削除されたので、請求人が指摘する不備はないものとなった。

4)請求人は、必須要件項1には「積層材料の同士(10)(11)は、前記シール帯域の中央部分(13)を、突起(19)のほぼ矩形の先端面で圧するようになっている」とあるところ、第2実施例の場合には、シール帯域の中央部分ではなく、シール帯域の一側部を圧しているので、「中央部分」を圧するということは必須ではないことになる旨主張している。

しかしながら、請求人が指摘する必須要件項1の記載は、本件特許明細書の第1実施例により十分に裏付けられていると認められるので、請求人が指摘する点で不備が存するとは認められない。

5)請求人は、必須要件項1には「突起(19)のほぼ矩形の先端面」とあり、また必須要件項2には「突状(9)のほぼ矩形の平らな平面」とあるところ、発明の詳細な説明には「突条(9)は断面がほぼ長方形であり」と記載されており、これらの記載は一致しない旨主張している。

しかしながら、矩形は長方形と同義であり(例えば、「岩波国語辞典 第2版」(1973-12-5)岩波書店、第263頁「矩形」の項参照。)、また、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書では、請求人が指摘する必須要件項1の記載は「断面がほぼ矩形の突起(9)の先端面」、及び必須要件項2の記載は「断面がほぼ矩形の平らな先端面を有する突条(9)」と訂正されたので、請求人が指摘する不備が存するとは認められない。

6)請求人は、必須要件項2における「前記加熱棒(7)に高周波電力を印加しつつ、前記突条(9)のほぼ平らな平面で前記シール帯域(13)(14)を押しつけ、これにより前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13)(14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、前記シール帯域(13)(14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分でせき止められるようになっている」との記載は、方法とこれに基づく作用の記載であり、装置発明の構成に欠くことができない事項の記載ではない旨主張している。

しかしながら、単に方法とこれに基づく作用が特許請求の範囲に記載されているという理由だけで特許法第36条に規定する要件を満たしていないとして当該特許を無効にすることは適当ではなく、特許法第36条に規定する要件を満たしていないとして当該特許を無効にすべき場合は、かかる記載により発明の構成を不明確にするような場合に限られるというべきである。

そこで、本件において、請求人が指摘する必須要件項2の部分が発明の構成を不明確にするような場合に該当するかどうかについて検討すると、まず、当該部分は平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書では「前記加熱棒(7)に高周波電力を印加するとともに、前記中央シール帯城(13)以内において、前記突条(9)の先端面で前記熱可塑性材料層(3)を互いに押しつけるようになっており、これにより、前記熱可塑性材料層(3)は、前記シール帯域(13、14)内で溶融して、溶融した熱可塑性材料が前記導電性材料層(4)の表面より流出されるが、これが、前記シール帯域(13、14)の外側の前記熱可塑性材料層(3)の溶融していない部分によりせき止められるようになっている」と訂正されている。

そして、上記の記載からは、必須要件項2の構成を不明確にすると認めることはできないので、請求人の主張に基づき本件特許を無効にすることはできない。

(むしろ、上記の記載は、必須要件項2を構成する各部材の共働関係を一層明らかにすることにより、同発明の構成の理解に資するものであるということもできる。)

7)請求人は、本件公報には「シール帯域内の熱可塑性の層を互いに強力に押しつけ溶融熱可塑性材料を前記領域からシール帯域の隣接領域へ流出させる段階を有することを特徴とする本発明の方法によって達成される。・・・」(本件公報第4欄第10~17行)の記載における「溶融熱可塑性材料を前記領域からシール帯域の隣接領域へ流出させる段階」という記載は不明瞭である旨主張している。

しかしながら、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書では、請求人が指摘する発明の詳細な説明における記載部分は「シール帯域内の熱可塑性の層を互いに強力に押しつけ溶融熱可塑性材料を前記領域の中の高圧の領域から隣接部分へ流出させ」と訂正されたので、請求人が指摘する不備はないものとなった。

8)請求人は、本件公報には「シール帯域内には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層のみが残り、これが包装積層材料の支持層と密着し、一方シール帯域の隣接領域内では双方の熱可塑性の層からの良く混合された熱可塑性材料のたい積部分によって強みと優れた密封性が保証される。」(本件公報第4欄第19~24行)という記載は不明瞭である旨主張している。

しかしながら、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書では、請求人が指摘する発明の詳細な説明における記載部分は「シール帯域の中の高圧の領域には不純物の無い非常に薄い熱可塑性の層のみが残り、これが包装積層材料の支持層に接合された導電性材料層と密着し」と訂正されたので、請求人が指摘する不備はないものとなった。

9)請求人は、被請求人が平成5年1月18日付け審判請求理由補充書において主張している内容には、本件公報の発明の詳細な説明には全く記載されていない部分が包含されており、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、構成及び効果の記載不備がある旨主張している。

しかしながら、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施することができる程度に特許請求の範囲において示された本件第1及び第2発明の構成及び効果が記載されていると認められるので、請求人の主張は採用できない。

〈3〉主張3について

前述のように、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は適法なものである(「Ⅱ.訂正請求について」の「5.訂正の当否についての結論」参照。)ので、本件発明は前記訂正後の発明と同じであることから、本件発明と各甲号証に記載された発明との対比・判断の内容は、訂正後の本件第1及び第2発明と各甲号証に記載された発明とを対比・判断したところの、前記「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して〈3〉対比・判断」の項に記載したとおりのものとなる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

〈4〉主張4について

被請求人は、平成7年6月8日付け手続補正書により専用実施権者からの承諾書を提出しているので、請求人が指摘する不備はないものとなった。

〈5〉主張5について

「Ⅱ.訂正請求について 1.審理の対象とする訂正明細書について」に記載したように、本件に関しては平成7年1月26日付け訂正請求書は採用せず、平成7年12月31日付けの訂正請求書に基づいて審理を行うので、被請求人が平成7年1月26日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲の記載に不備な点があるかどうかの検討を行う必要性はないものとなった。

〈6〉主張6について

「Ⅱ.訂正請求について 1.審理の対象とする訂正明細書について」に記載したように、本件に関しては平成7年1月26日付け訂正請求書は採用せず、平成7年12月31日付けの訂正請求書に基づいて審理を行うので、被請求人が平成7年1月26日付けで提出した訂正明細書の特許請求の範囲の記載に不備な点があるかどうかの検討を行う必要性はないものとなった。

〈7〉主張7について

前述のように、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は適法なものである(「Ⅱ.訂正請求について」の「5.訂正の当否についての結論」参照。)ので、本件発明は平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書に記載された発明であることから、本件発明と各甲号証に記載された発明との対比・判断の内容は、訂正後の本件第1及び第2発明と各甲号証に記載された発明とを対比・判断したところの、前記「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して〈3〉対比・判断」の項に記載したとおりのものとなる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

〈8〉主張8について

前述のように、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は適法なものである(「Ⅱ.訂正請求について」の「5.訂正の当否についての結論」参照。)ので、本件発明は平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書に記載された発明であることから、本件発明と各甲号証に記載された発明との対比・判断の内容は、訂正後の本件第1及び第2発明と各甲号証に記載された発明とを対比・判断したところの、前記「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して〈3〉対比・判断」の項に記載したとおりのものとなる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

〈9〉主張9について

前述のように、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は適法なものである(「Ⅱ.訂正請求について」の「5.訂正の当否についての結論」参照。)ので、本件発明は平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書に記載された発明であることから、本件発明と各甲号証に記載された発明との対比・判断の内容は、訂正後の本件第1及び第2発明と各甲号証に記載された発明とを対比・判断したところの、前記「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して〈3〉対比・判断」の項に記載したとおりのものとなる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

〈10〉主張10について

被請求人は、平成8年6月7日付け手続補正書により専用実施権者からの承諾書を提出しているので、請求人が指摘する不備はないものとなった。

〈11〉主張11について

「Ⅱ.訂正請求について」の「2.平成4年9月30日付け手続補正書について」に記載したように、本件においては平成4年9月30日付けの手続補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなされ、また、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は適法なものである(「Ⅱ.訂正請求について」の「5.訂正の当否についての結論」参照。)ので、請求人の主張は採用できない。

〈12〉主張12について

「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(1)特許法第134条第2項の規定に関して」の「訂正事項〈1〉」に記載したように、今回の特許請求の範囲第1項及び第3項の訂正は特許請求の範囲の限縮に該当するものであると認められるし、しかも請求人が指摘する点が不明りょうであるということもできない

したがって、請求人の主張は採用できない。

〈13〉主張13について

前述のように、平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書による訂正は適法なものである(「Ⅱ.訂正請求について」の「5.訂正の当否についての結論」参照。)ので、本件発明は平成7年12月31日付け訂正請求書に添付した訂正明細書に記載された発明であることから、本件発明と各甲号証に記載された発明との対比・判断の内容は、訂正後の本件第1及び第2発明と各甲号証に記載された発明とを対比・判断したところの、前記「Ⅱ.訂正請求について」の「4.訂正の当否についての判断」の「(3)特許法第134条第5項で準用する同法第126条第3項の規定に関して〈3〉対比・判断」の項に記載したとおりのものとなる。

したがって、請求人の主張は採用できない。

Ⅳ.むすび

以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

平成8年9月19日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

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